2014年06月01日

歴史と白血病の名の由来

●歴史と白血病の名の由来


歴史

試験管に血液を取り遠心分離すると上に血漿、下に赤血球が分離し、中間に白血球を含む白灰色の薄い層が現れる。

白血病では中間の白灰色の層の厚みが増していることがある。

19世紀半ば、ドイツの病理学者ルドルフ・ルートヴィヒ・カール・ウィルヒョー(ウィルヒョウ,フィルヒョウ)が巨大な脾腫を伴い、血液が白色がかって死亡した(今で言う慢性骨髄性白血病)患者を調べて報告したのが白血病の血液疾患としての最初の認知であるが、ウィルヒョーの報告ののち、白血病は経過が比較的ゆっくりなものを慢性白血病、早いものを急性白血病と分類され(現在の分類法とは違う)、1930年代には細胞科学的手法によってリンパ性と骨髄性に分類されるようになった。


しかしウィルヒョーの報告からほぼ100年にわたって、白血病には有効な治療法はなく、急性白血病で数週から数か月、慢性白血病でも数か月から数年で死亡する死の病であった。


第二次世界大戦後に登場した抗がん剤 6-MP が白血病に適用され始めたが、抗がん剤の種類も知見も少なく、血小板輸血や抗生物質も乏しかった1960年代までは死の病である状況は変わらなかった。

1960年代からは抗がん剤の種類・知見も増加して抗がん剤 Ara-c とダウノルビシンの多剤併用療法が開発され、抗生物質もさまざま登場し、少しずつ白血病に立ち向かえるようになっていった。

1960年代後半からは抗がん剤の多剤併用療法の改良によって白血病が治癒する例が増え始め、同時に抗生物質の充実、1970年代から始まった血小板輸血などの支持療法の進歩もあり、急性白血病患者の70-80%は一旦は白血病細胞が見られなくなるようになったが、しかし、多剤併用療法のみでは再発は少なくなく、最終的には多剤併用療法のみでの治癒率は30-40%程度で頭打ちになっている。



その後1970年代から研究の始まった造血幹細胞移植が1990年代から本格的に適用され始め、化学療法だけでは長期生存は難しい難治例でも造血幹細胞移植で2-6割の患者は長期生存が期待できるようになった。

また急性前骨髄球性白血病 (AML-M3) で画期的な治療法である分化誘導療法の発見、2001年には慢性骨髄性白血病 (CML) の分子標的薬グリベックの登場など、AML-M3 や CML、予後が良い小児ALL などでは大半の患者が救われるようになってきている。




●血の色と白血病の名の由来

白血病は、前述したウィルヒョーが見た死亡患者の血液が白っぽくなっていたので、ギリシャ語の白い (λεύκος) と血 (αίμα) をラテン文字へ換字した (leukos) と (haima) から造語した leukemia(白血病)と名付けたといわれる。

ウィルヒョーが見た患者では極端に白血球が増加し血液が白っぽくなっていたと考えられるが、実際に血液が真っ白になることはなく、白血病細胞が極端に増えた例で通常は濃い赤色である血液が赤から灰白赤色になるだけで、ほとんどの白血病患者では血液の色は赤いままである。



血液の赤色は赤血球の色であるが、赤血球が完全になくなる前に人は死亡するので血液が完全に真っ白になるまで生存することはできない。

白血病によって貧血が強くなると血の色が薄くはなる。

また同様に、赤白血病(FAB分類M6)でも血がピンクになるわけではない。一方、家族性リポ蛋白リパーゼ欠損症では血の中に中性脂肪が溜まり血が乳白色となるが、これは白血病とは呼ばない。


ちなみに健康人の血液を遠心分離すると下層には濃い赤色の赤血球、上層には黄色みかかった透明の血漿に分離するが、中間にはやや灰色がかった白い薄い層が現れる。白い層をなす血液細胞をギリシャ語由来の(白い)を意味する leuko と細胞を表す cyte を併せて Leukocyte:白血球と名付けられた。

白血球の一つ一つは実際には無色半透明だが多く集まると光を乱反射して白く見える。

白血病患者のほとんどでは白血球あるいは白血球同様に無色半透明な芽球が増加しているので血液を遠心分離すると中間の白い層の厚みは増加している。

白い層の増加の程度が甚だしいと血液の色も変化する。





●症状

白血病の症状は急性白血病と慢性白血病では大きく違う。

急性白血病の症状としては、骨髄で白血病細胞が増加し満ちあふれるために正常な造血が阻害されて正常な血液細胞が減少し、正常な白血球の減少に伴い細菌などの感染症(発熱)、赤血球減少(貧血)に伴う症状(倦怠感、動悸、めまい)、血小板減少に伴う易出血症状(歯肉出血、鼻出血、皮下出血など)がよく見られ、ほかにも白血病細胞の浸潤による歯肉の腫脹や時には(とくに AML-M3 では)大規模な出血もありうる。

さらに白血病が進行し、各臓器への白血病細胞の浸潤があると、各臓器が傷害あるいは腫張し圧迫されてさまざまな症状がありうる。

腫瘍熱、骨痛、歯肉腫脹、肝脾腫、リンパ節腫脹、皮膚病変などや、白血病細胞が中枢神経に浸潤すると頭痛や意識障害などの様々な神経症状も起こりうる。

急性リンパ性白血病ではリンパ節・肝臓・脾臓の腫大や中枢神経症状はよく見られるが、AML では多くはない。



ただし、これらの諸症状は白血病に特有の症状ではなく、これらの症状を示す疾患は多い。故に症状だけで白血病を推定することは困難である。

慢性骨髄性白血病では罹患後しばらくは慢性期と呼ばれる状態が続き、特に症状が現れず健康診断などで白血球数の異常が指摘されて初めて受診することも多く、慢性期で自覚症状が現れる場合は脾腫による腹部膨満や微熱、倦怠感の場合が多い。

ただし、慢性骨髄性白血病の自然経過では数年の後必ず、移行期と呼ばれる芽球増加の中間段階を経て急性転化を起こす。

急性期では芽球が著増し急性白血病と同様の状態になる。



慢性リンパ性白血病では一般に進行がゆっくりで無症状のことも多く、やはり健康診断で白血球増加を指摘されて受診することが多いが、しかし80%の患者ではリンパ節の腫脹があり(痛みはないことが多い)他人からリンパ節腫脹を指摘されて受診することもある。

リンパ節の腫れ以外に自覚症状がある場合には倦怠感、脾腫による腹部膨満や寝汗、発熱、皮膚病変などが見られる。



慢性リンパ性白血病の低リスク群では無症状のまま無治療でも天寿を全うすることもあるが、病期が進行してくると貧血や血小板減少が進み、細菌や真菌などの日和見感染症や自己免疫疾患を伴うこともある。





●白血病の検査

白血病の検査では血液検査と骨髄検査が主になる。

白血病の本体は骨髄にあり、白血病の状態を正確に把握するには骨髄検査が不可欠であるが骨髄検査は患者にとって負担の多い検査であり、患者への負担が少ない血液検査も重要になる。(骨髄と血液を川に例えると水源が骨髄で川の水が血液に相当する。水源の異常は川の水質や水量に影響を与える。川の水の状態から水源に異常があることはある程度推測することは出来るが、水源の状態や何が起きているのかを正確に把握するには水源そのものを調べるしかない。しかし水源まで行くことは苦痛を伴い労力が必要なので川の水の状態をこまめに点検し、必要に応じて水源の再点検も行うことが大事になる。)




血液検査(末梢血)で芽球を認めれば白血病の可能性は高い。

末梢血で芽球が認められなくとも、白血球が著増していたり、あるいは赤血球と血小板が著しく減少し非血液疾患の可能性が見つからなければ、骨髄検査が必要になる(白血病では白血球は、著増していることもあれば正常あるいは減少していることもある。10万を超えるような場合以外は白血球数だけでは白血病かどうかは分からない)。



骨髄で芽球の割合が著増していたり、極端な過形成であればやはり白血病の可能性は非常に高い。



急性白血病の骨髄では芽球の増加を認め、WHO分類では骨髄の有核細胞のなかでの芽球の割合が20%以上であれば急性白血病と定義するので骨髄検査を行わないと診断を確定できない。

さらに骨髄内の有核細胞中の MPO陽性比率や非特異的エステラーゼ染色や免疫学的マーカー捜索によって急性白血病中の病型の診断を確定させる。

CML や CLL でも骨髄でのそれぞれの特徴的な骨髄像の確認は重要であり、CML ではフィラデルフィア染色体の捜索を行う。



また、白血病細胞の中枢神経への浸潤の可能性や脾・肝臓腫、感染症などの白血病の症状を探るための諸検査(CT検査、脳脊髄液検査、細菌培養検査等)も行われる。



急性白血病細胞は多くの場合、白血球の幼若な細胞と類似した形態を取るため、芽球あるいは芽球様細胞と呼ばれる。

血液細胞は大きくは、白血球、赤血球、血小板の3種の分けられるが、白血病細胞(芽球)は赤血球や血小板と違って有核であり、また赤血球と違い溶血剤に溶けず血小板とはサイズが違うので、正常な白血球ではないが自動血球計数器で分析する血液検査の血液分画(血液細胞の分類とカウント)の中では白血球の区分に入れられる(高性能な検査機や検査技師が行う目視検査では血液細胞の種類ごとに細かく分類ができる)。

急性白血病の血液検査ではヘモグロビンや血小板数は低下していることが多く、芽球が認められることが多い。


血液中の有核細胞が多数の骨髄系芽球と少数の正常な白血球だけで中間の成熟段階の細胞を欠けば(白血病裂孔)急性骨髄性白血病の可能性が高く、リンパ芽球が多数現れていれば急性リンパ性白血病の可能性が高い。

芽球から成熟した芽球を含めた白血球総数は著明に増加していることが多いが、なかには正常あるいは減少していることもある。




慢性骨髄性白血病では、血液、骨髄の両方で芽球から成熟した細胞まで白血球の著明な増加があり血小板も増加していることが多く、慢性リンパ性白血病では成熟したリンパ球が著明に増加する。

急性白血病細胞は分化能を失い幼若な形態(芽球)のまま数を増やすので、骨髄は一様な細胞で埋め尽くされる。

慢性白血病では細胞は分化能を失わずに、しかし正常なコントロールを失って自律的な過剰な増殖を行うので正常な骨髄に比べて各成熟段階の白血球系細胞が顕著に多くなる(過形成)。骨髄検査では各細胞を細かく分けてカウントし、とくに芽球の割合と形態が重要になる。赤芽球は通常では芽球には含まれないが、赤白血病 (AML-M6) では白血病細胞の半数程度は赤芽球と同様の表面抗原を発現するため、赤白血病を疑われたときのみ、芽球に赤芽球を含める。


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白血病について

●白血病について

白血病とは白血病(はっけつびょう、Leukemia)は、「血液のがん」ともいわれ、遺伝子変異を起こした造血細胞(白血病細胞)が骨髄で自律的に増殖して正常な造血を阻害し、多くは骨髄のみにとどまらず血液中にも白血病細胞があふれ出てくる血液疾患。

白血病細胞が造血の場である骨髄を占拠するために造血が阻害されて正常な血液細胞が減るため感染症や貧血、出血症状などの症状が出やすくなり、あるいは骨髄から血液中にあふれ出た白血病細胞がさまざまな臓器に浸潤(侵入)して障害することもある。



治療は抗がん剤を中心とした化学療法と輸血や感染症対策などの支持療法に加え、難治例では骨髄移植や臍帯血移植などの造血幹細胞移植治療も行われる。

大きくは急性骨髄性白血病 (AML)、急性リンパ性白血病 (ALL)、慢性骨髄性白血病 (CML)、慢性リンパ性白血病 (CLL) の4つに分けられる。




●白血病の概要

日本血液学会では

『白血病は遺伝子変異の結果、増殖や生存において優位性を獲得した造血細胞が骨髄で自律的に増殖するクローン性の疾患群である。

白血病は分化能を失った幼若細胞が増加する急性白血病と、分化・成熟を伴いほぼ正常な形態を有する細胞が増殖する慢性白血病に分けられる。

また分化の方向により骨髄性とリンパ性に大別される』



−-引用、日本血液学会、日本リンパ網内系学会編集, 『造血器腫瘍取扱い規約』金原出版、2010年、p.2


としている。





白血病は病的な血液細胞(白血病細胞)が骨髄で自律的、つまりコントロールされることなく無秩序に増加する疾患である。

骨髄は血液細胞を生み出す場であり、骨髄での白血病細胞の増加によって正常な造血細胞が造血の場を奪われることで正常な造血が困難になり、血液(末梢血)にも影響が及ぶ。



あるいは骨髄から血液中にあふれ出た白血病細胞がさまざまな臓器に浸潤(侵入)して障害することもある。

白血病患者の血液中では白血病細胞あるいは病的な白血球を含めると白血球総数は著明に増加することも、あるいは減少することもある。


しかし、正常な白血球は減少し血小板や赤血球も多くの場合減少する。



白血病の症状として、正常な白血球が減ることで感染症(発熱)、赤血球が減少することで貧血になり貧血に伴う症状(倦怠感、動悸、めまい)、血小板が減少することで易出血症状などがよく見られ、また血液中にあふれ出た白血病細胞が皮膚や神経、各臓器に浸潤(侵入)してそれらにさまざまな異常が起きることもある。



治療は抗がん剤を中心とした化学療法によって白血病細胞の根絶を目指し、白血病の諸症状の緩和に輸血や造血因子投与や(抗菌薬やクリーンルームなどの)感染症対策などの支持療法に加え、難治例では骨髄移植などの造血幹細胞移植治療も行われる。



白血病は年に10万人あたりおよそ7人(2005年、日本)が発症する比較的少ないがんであるが、多くの悪性腫瘍(癌、肉腫)は高齢者が罹患し小児や青年層では極めてまれなのに対し、白血病は小児から高齢者まで広く発症するため、小児から青年層に限ればがんの中で比較的多いがんである。


造血の場である骨髄で造血の元になっている細胞が変異したことによって起きるのが白血病であり、癌や肉腫のように固形の腫瘍を形成しないため、胃癌や大腸癌などのように外科手術の適応ではないが、その代わり抗がん剤などの化学療法には極めてよく反応する疾患である。



19世紀にドイツの病理学者ルドルフ・ルートヴィヒ・カール・ウィルヒョー(ウィルヒョウ,フィルヒョウ)が白血病を初めて報告して Leukemia(白血病)と名付けたが、かつては白血病は治療が困難で、自覚症状が現れてからは急な経過をたどって死に至ったため、不治の病とのイメージを持たれてきた。

また、白血病は現代においても現実に若年層での病死因の中で高い割合を占めることから、フィクションでは、かつての結核に代わって、癌と並び現代ではしばしば若い悲劇の主人公が罹患する設定になることが多い。



しかし、1980年代以降、化学療法や、骨髄移植 (bone marrow transplantation; BMT)、末梢血造血幹細胞移植 (peripheral blood stem cell transplantation; PBSCT)、臍帯血移植 (cord blood transplantation; CBT) の進歩に伴って治療成績は改善されつつある。



一口に白血病と言っても、大きくは急性骨髄性白血病 (AML)、急性リンパ性白血病 (ALL)、慢性骨髄性白血病 (CML)、慢性リンパ性白血病 (CLL) の4つに分けられ、それぞれは様相の異なった白血病である。

急性白血病では増加している白血病細胞は幼若な血液細胞(芽球)に形態は似てはいるが、正常な分化・成熟能を失い異なったものとなる。


慢性白血病では1系統以上の血液細胞が異常な増殖をするが、白血病細胞は分化能を失っておらず、幼若な血液細胞(芽球)から成熟した細胞まで広範な細胞増殖を見せる。



急性白血病細胞は血液細胞の幼若細胞に似た形態を取り、多くの急性白血病では出現している白血病細胞に発現している特徴が白血球系幼若細胞に現れている特徴と共通点が多い細胞であるが、多くはないが赤血球系統や血小板系統の幼若細胞の特徴が発現した白血病細胞が現れるものもあり、それらも白血病である。



血液細胞は分化の方向でリンパ球と骨髄系細胞に分けられるが、ほとんどの白血病細胞も少しであっても分化の方向付けがありリンパ性と骨髄性に分けることができる。



白血病における慢性と急性の意味は、他の疾患で言う急性・慢性の意味合いとは違う。

急性白血病が慢性化したものが慢性白血病という訳ではなく、白血病細胞が幼若な形態のまま増加していく白血病を「急性白血病」、白血病細胞が成熟傾向を持ち一見正常な血液細胞になる白血病を「慢性白血病」という。



白血病の歴史の中で一般に無治療の場合には白血病細胞が幼若な形態のまま増加していく白血病の方が死に至るまでの時間が短かったので「急性」と名付けられた。

急性白血病が慢性化して慢性白血病になることはないが、逆に慢性白血病が変異を起こして急性白血病様の病態になることはある。



一般的に用いられる形容で、白血病を「血液の癌」と呼ぶが、この形容は誤りである。

漢字で「癌」というのは「上皮組織の悪性腫瘍」を指し、上皮組織でなく結合組織である血液や血球には使えない。

ただし、「血液のがん」という平仮名の表記は正解である。平仮名の「がん」は、「癌」や「肉腫」、血液悪性腫瘍も含めた広義的な意味で使われているからである。



悪性リンパ腫や骨髄異形成症候群といった類縁疾患は通常、白血病には含まれないが、悪性リンパ腫とリンパ性白血病の細胞は本質的には同一であるとされ、骨髄異形成症候群にも前白血病状態と位置付けられ進行して白血病化するものもあり、これら類縁疾患と白血病の境目は曖昧な面もある。


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「抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドライン」の改訂について


○「抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドライン」の改訂について

(平成17年11月1日)

(薬食審査発第1101001号)

(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知)



抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドラインについては、平成3年2月4日付薬新薬第9号厚生省薬務局新医薬品課長通知「抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドラインについて」(以下「現行ガイドライン」という。)として通知され、抗悪性腫瘍薬の承認申請の目的で実施される臨床試験の評価方法の標準的方法として適用されてきたところである。今般、現行ガイドラインが通知されてから10年以上の年月が経過し、この間に抗悪性腫瘍薬の開発・審査を巡る状況に大きな変化が認められたことから、別添のとおり現行ガイドラインを改め、下記により取り扱うこととしたので、貴管下関係業者に対し周知方よろしくご配慮願いたい。



1.適用日等

(1) 本ガイドラインは平成18年4月1日より適用する。従って、第V相試験成績の承認申請時の提出に係る取扱いについても、平成18年4月1日以降に承認申請が行われるものに適用すること。

(2) 本ガイドラインの施行に伴い、現行ガイドラインは平成18年3月31日をもって廃止すること。

(3) 本通知日以降、可能な範囲で本ガイドラインに示された方法等を開発計画に取り入れることは差し支えないこと。

2.留意事項

学問の進歩等を反映した合理的根拠に基づいたものであれば、必ずしもここに示した方法を固守するよう求めるものではないこと。

以上


(別添)

抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドライン

抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドライン

T.緒言

本ガイドラインは、抗悪性腫瘍薬の承認取得を目的として実施される、新医薬品の臨床的有用性(Clinical benefit)を検討するための臨床試験(薬事法(昭和35年法律第145号。以下「法」という。)第2条で定義される「治験」及び「製造販売後臨床試験」等)の計画、実施、評価方法等について、現時点で妥当と思われる方法と、その一般的指針をまとめたものである。当該薬剤や対象疾患、科学的なエビデンスの蓄積状況に応じて、臨床的有用性の評価方法の妥当性を科学的に判断すべきである。

U.背景

「抗悪性腫瘍薬の臨床評価ガイドライン作成に関する研究班」による抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドラインが平成3年2月に通知されてから、既に10年以上の年月が経過した。この間、抗体治療薬や分子標的薬等新しい作用機序をもつ薬剤の開発、臨床試験を行う上での国内体制整備、臨床試験に関する知識の普及、規制当局における医薬品審査体制の整備、GCP(Good Clinical Practice)の改正及び海外臨床試験成績の積極的な利用等、新薬の開発・審査を巡る状況に大きな変化が認められた。

一方、海外大規模試験により臨床的有用性の検証された薬剤で、国内への導入が大幅に遅れ、国内臨床現場において国際的標準薬が使用できないという状況も認められた。これらの状況を踏まえて、米・EUをはじめとする海外の規制当局における抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドラインとの共通化も念頭に置き、今回のガイドライン改訂を行った。

なお、今後は、抗悪性腫瘍薬における海外臨床成績の積極的な利用だけでなく、国内で行われた臨床試験成績が海外の承認申請時に利用されることが新薬開発国としての責務であると考えられる。

V.概要

1) 抗悪性腫瘍薬の定義について

本ガイドラインの対象となる抗悪性腫瘍薬は、悪性腫瘍病変の増大や転移の抑制、又は延命、症状コントロール等の何らかの臨床的有用性を悪性腫瘍患者において示す薬剤を指す。

2) 抗悪性腫瘍薬の評価に必要とされる臨床試験の種類について

本ガイドラインは、第T相から第V相までの臨床試験の在り方を記述している。第T相試験では主として安全性を、第U相試験では腫瘍縮小効果等の有効性と安全性を、第V相試験では延命効果等を中心とした臨床的有用性を検討する。承認申請時、さらに承認後の製造販売後臨床試験を通じて、当該薬剤を系統的に評価するために、対象疾患、治療体系における当該薬剤の位置づけや海外での開発状況を十分に検討した上で、どのような目的の試験をどのような順序で実施するのかを開発者自身が判断しなければならない。その際、日・米・EU医薬品規制調和国際会議(ICH:International Conference on Harmonisation of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use)で作成された有効性領域(E:Efficacy)のガイドラインの一つであるICH E8ガイドライン「臨床試験の一般指針」(平成10年4月21日医薬審第380号)に基づき、当該薬剤を取り巻く状況を勘案し、臨床開発計画を立案する必要がある。さらに、ICH E5ガイドライン「外国臨床データを受け入れる際に考慮すべき民族的要因について」(平成10年8月11日医薬審第672号)、「外国で実施された医薬品の臨床データの取扱いについて」(平成10年8月11日医薬発第739号)が発出されたことにより、国外で既に承認されている抗悪性腫瘍薬、又は信頼できる国外での臨床試験成績が得られている治験薬では、これらの成績及び国内臨床試験成績を基に承認申請資料を作成することが可能となった。このため、海外で臨床開発が先行している抗悪性腫瘍薬については、海外試験成績の導入を考慮し、ICH E5ガイドラインに基づいて迅速に国内開発が進むような臨床開発計画を立案することを検討すべきである。

3) 承認申請時の第V相試験成績の提出

患者数が多い癌腫を対象とした抗悪性腫瘍薬では、延命効果等の明確な臨床的有用性の検証が必須と考えられる。このため、今回のガイドライン改訂では、非小細胞肺癌、胃癌、大腸癌、乳癌等で、取得を目的とする効能・効果の癌腫のうち、その患者数が多い癌腫では、それぞれの癌腫について延命効果を中心に評価する第V相試験の成績を承認申請時に提出することを必須とする。ただし、上記癌腫であっても、科学的根拠に基づき申請効能・効果の対象患者が著しく限定される場合はこの限りではない。

また、第U相試験終了時において高い臨床的有用性を推測させる相当の理由が認められる場合には、第V相試験の結果を得る前に、承認申請し承認を得ることができる。その際は、承認後一定期間内に、第V相試験の結果により速やかに、当該抗悪性腫瘍薬の臨床的有用性及び第U相試験成績に基づく承認の妥当性を検証しなければならない。当該第V相試験の実施場所に関しては国内外を問わない。また、海外に信頼できる第V相試験成績が存在する抗悪性腫瘍薬は、承認申請前に国内で実施する臨床試験数を最小限とし、効率よく、かつ迅速に当該薬剤の導入が図れるように臨床開発計画を立案すべきである。

新たに開発される医薬品は、がん治療成績の現状を考慮すると既承認薬と比較して何らかの優れた特長を示すことが必要である。

4) 臨床開発計画を立案するために従うべき指針について

臨床試験はヒトを対象とするため、平成9年10月から施行された厚生省令第28号「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(平成15年7月30日及び平成17年4月1日に一部改正が行われている。これらを含めて、以下「新GCP」という。)及び関係するその他のガイドラインに従い、治験実施計画書を立案する必要がある。また、臨床薬物動態の検討は、「医薬品の臨床薬物動態試験について」(平成13年6月1日医薬審発第796号)に基づき、さらに、統計学的事項に関しては、「臨床試験のための統計的原則について」(平成10年11月30日医薬審第1047号)に基づき、治験実施計画書を立案する必要がある。

希少疾病用医薬品(法第77条の2の規定)に該当する疾患の場合は、収集可能な症例数を用いて臨床試験を行うことが可能である。

5) 臨床開発に関する規制当局との相談について

国内における抗悪性腫瘍薬の適切な臨床開発を促進するために、臨床試験開始前、及び試験実施中において、開発方針に関する規制当局との相談を積極的に利用することが望ましい。

W.第T相試験

[1.目的]

第T相試験は非臨床試験成績を基に治験薬を初めてヒトに投与する段階である。非臨床試験で観察された事象に基づき、用量に依存した治験薬の安全性を検討するのが主な目的であり、以下の項目について検討を行う。

a) 至適用量(optimal dose)又は臨床上適切な用量、例えば最大耐量(MTD:maximum tolerated dose)、最大許容量(MAD:maximum accepted dose)の推定

b) 薬物動態学的検討

c) 第U相試験で推奨される投与量の決定

d) 治療効果の観察

e) 治療効果を予測するマーカーの探索(分子標的薬等)

なお、臨床試験の開始前に、治験薬の単回投与毒性試験及び反復投与毒性試験、その他、治験薬をヒトに投与開始する場合に必要な安全性を確認する試験が終了していることが原則である。

[2.試験担当者及び試験施設]

新GCPに規定される実施医療機関としての条件を満たし、非臨床試験成績について十分な知識を有する研究者、臨床薬理学に精通した研究者及び抗悪性腫瘍薬について十分な知識と経験を有する治験担当医師が協同して実施することが望ましい。

第T相試験では、予期せぬ副作用の出現をみることがある。このため試験担当者相互の連絡を密にして試験を安全に実施できるように、初期にはできるだけ単一施設で行うことが望ましい。やむを得ず多施設の共同試験により第T相試験を行う場合は、均一な臨床の能力を持つ必要最小限の施設の共同試験とする。また、各施設における代表者たる治験責任医師及び治験依頼者は、情報の交換を速やかに行うとともに、各施設における試験の進行状況を定期的に確実に把握しておくよう努力する必要がある。

[3.対象患者]

毒性が強い抗悪性腫瘍薬の第T相試験では、健康な人ではなく、がん患者を対象とすべきである。また、一般的に認められた標準的治療法によって延命や症状緩和が得られる可能性のあるがん患者を対象とすべきではない。

治験の対象となる症例は、原則として入院による管理下におく。

対象患者は、以下の条件を満たすものとする。

@ 組織診又は細胞診により悪性腫瘍であることが確認されていること。

A 治験参加の時点で、通常の治療法では効果が認められないか、又は一般に認められた標準的治療法がない悪性腫瘍を有する患者であること。ただし、客観的に計測可能な病変を有する必要はない。なお、薬剤の特性や開発目標により特定の癌腫を対象とすることが明白な場合は、その癌腫に限定して試験を行う。

B 生理的に代償機能が十分であり、造血器、心臓、肺、肝、腎等に著しい障害のないこと、すなわち治験薬投与時の有害事象を適確に評価しうる臓器機能が維持されていること。ただし、一般状態(PS:Performance Status)が3、4の症例は除外する。年齢については、臓器機能や同意取得能力を考慮して決定する。

C 前治療の影響がないと認められること、すなわち試験開始時点では安定した生理状態にあること。前治療から臨床的に妥当と判断される間隔をあけることが必要とされる。

[4.第T相試験のデザイン]

a) 投与経路

静注、経口、筋注、皮下投与等の全身的投与とする。1回投与、週1回反復投与、連日投与等各種の用法のうち、非臨床試験における成績を基に、予想される第U相試験での用法についてそれぞれ検討を行う。

また、単回投与(1コース投与)における安全性の確認のみならず、反復投与での蓄積毒性の有無及び安全性を確認しておく必要がある。

選択した用法について、妥当な科学的理由を示す必要がある。

併用療法においては、PK/PD(pharmacokinetics/pharmacodynamics)の検討により、組み合わせる薬剤どうしの相互作用を検討し、その投与タイミングを決定すること。

b) 有害事象の評価規準

有害事象の評価規準は国際的に認知されている規準(米国国立がん研究所(NCI)のCTCAE(Common Terminology Criteria for Adverse Events v3.0)(以下「CTCAE」という。)等)を用い、その規準に従い有害事象の内容及び重症度を評価する。なお、有害事象と治験薬との関連性について評価しなければならない。有害事象のうち、治験薬との因果関係がある、又は否定できないものを副作用とする。

c) 評価指標(エンドポイント)

・至適用量又は臨床上適切な用量。例えば最大耐量(MTD)又は最大許容量(MAD)、及び用量制限毒性(DLT:dose-limiting toxicity)

用量制限毒性(種類、程度及びその頻度)や最大耐量、又は最大許容量等の定義とその判断規則についてあらかじめ明確に規定しておくこと。

・薬物動態(PK)及び薬物動態/薬力学(PK/PD)の評価

・腫瘍縮小効果

d) 初回投与量の決定

初回投与量は、原則として、mg/m2で表示されたMELD10(mouse equivalent 10% lethal dose:マウスに対する10%致死量(LD10値))の1/10量である。ただし、この量でテストされた他の動物種に対し、毒性を示さないことが条件となる。もし、毒性を示した場合、最も感受性の高い動物種に対し、最小で可逆性の作用しか示さない用量よりも低い用量を初回投与量とする。また、海外において信頼できる第T相試験成績が入手できる場合にはそれらを参考にして初回投与量を決定することが望ましい。いずれにせよ、初回投与量は妥当な科学的根拠に基づいて慎重に決定することが必要である。

e) 増量計画と観察期間

治験薬の用量増加は、非臨床試験における用量―毒性曲線の勾配や薬理試験成績等に基づいて、また、用量―AUC(area under the curve)曲線の勾配や患者間の不均一性等も考慮し、さらに既承認の類似薬がある場合は、その臨床試験や非臨床試験成績等に基づき決定する必要がある。一般的に細胞毒性を持つ抗悪性腫瘍薬は有効性の期待できる治療域と中毒域が近接している。このことに十分留意し、治験薬の用量増加方法を検討すべきである。

一般的な増量計画としては伝統的方法であるFibonacciの変法を用いることもあったが、増量計画については、科学の進歩に従って最も適切なデザインを採用することが可能である。原則として1コース目に出現する毒性で増量や最大耐量(MTD)の1次判断を行うが、2コース目以上で出現する毒性も評価し、増量や最大耐量の1次判断の修正を行い、最終的に判断する。例えば、各々の用量段階には少なくとも3例のコホートによる観察を行い、Grade 3以上の薬剤との関連性を否定できない有害事象の発現が経験された場合、その段階にさらに少なくとも3例を加えた6例以上で検討を行う。各々の用量での有害事象の観察期間が終了し、解析結果が評価されるまで次の段階に増量しない。

投与量は薬剤使用の制限となる毒性が耐えられる範囲又は許容できる範囲まで、毒性が少ない場合は治療効果の明らかな徴候を生じるレベル又は事前に定めたレベルまで慎重に増量する。

治験薬が非臨床試験で遅延・遅発毒性を有していた場合には、その複雑な毒性作用から患者を守るために十分な観察期間を設定する必要がある。

f) 併用療法における用量設定

併用療法における投与開始量は、第一段階から単独薬剤投与以上の有効率を確保することを前提として、組み合わせる薬剤の毒性の重複の程度、予測されるDLT、薬剤相互作用の予測を考慮して決定すること。

g) 同一患者での増量計画

原則として同一患者での治験薬の増量は行わない。ただし、当該患者で治験薬の有効性が確認され、当該治験薬しか有効な治療薬がなく、治療継続を患者が希望する場合等では、同一患者での増量投与を検討する場合もある。

h) 国外において既に臨床成績が示されている治験薬の取扱いについて

国外において既に臨床成績が示されている治験薬で、ICH E5ガイドラインに基づき、他の民族での有効性や安全性、MTD、PK、PK/PD等が明らかにされている治験薬の国内における第T相試験では、これらの国外の成績を利用して初回投与量、用法及び増量計画を設定することが可能である。初回投与量は、治験薬の非臨床及び臨床成績を評価し、安全性確保に関して特別な問題がなく、国外の他の民族で決定されたMTD又はMAD等がある場合にはそれらを参考として設定する。ただし、PK、PK/PDの民族差を試験開始時より慎重に評価することが必要である。

第T相試験において治験薬のPK、PK/PDや安全性等に民族差がないことが予見できる場合は、ICH E5ガイドラインに則り、その後の治験を効率よく行うことを検討する。

i) 薬物動態学的検討

試験開始前に、薬物濃度の測定系の確立、活性物質の同定、代謝様式の検討がなされていることが必要である。治験薬のADME(absorption,distribution,metabolism,excretion)に関する諸性質(クリアランス、分布容積、生物学的利用率、血中半減期、代謝産物、血中蛋白結合性等)、さらに毒性出現との関係(PK/PD)、用量―AUC反応曲線の勾配等について検討を行い、適切な投与量及び投与間隔を決めるための参考とする。

[5.第T相試験結果のまとめ]

一般的に、第T相試験が終了した時点で、以下の事項についての検討が終了していることが望ましい。

・治験薬の投与経路、投与スケジュール

・最大耐量(MTD)又は最大許容量(MAD)

・用量制限毒性(DLT)

・薬物動態と毒性の関連性

・第U相試験における推奨用量

・副作用の発現を回避、又は軽減する予防方法

・治療効果を予測するマーカー(分子標的薬等)

X.第U相試験

第U相試験は、特定の癌腫に対する有効性、安全性を評価するために実施される。

[1.目的]

・第T相試験より決定された用法・用量に従って、対象とする癌腫における治験薬の臨床的意義のある治療効果、及び安全性を評価する。第U相試験における臨床的意義のある治療効果とは、通常、一定の規準で評価される腫瘍縮小効果を指す。

・対象とする癌腫に対して、治験薬を組み入れた新しい治療と既存の標準的治療との比較を行う第V相試験等のさらなる評価を行うべきかについて判断する。

・第T相試験で薬物動態と特定の副作用との関連性が示唆されるものについては、第U相試験でもさらに薬物動態と特定の副作用との関連性について検討し評価を行う。

・治験薬による副作用についてさらなる評価を行う。

―まれな副作用の発見

―亜急性又は蓄積性に出現する副作用の検討

―副作用に対する対処法の検討

・治療効果を予測するマーカー(分子標的薬等)のさらなる検索を行う。

[2.試験担当者及び試験施設]

新GCPに規定される実施医療機関としての条件を満たしている複数の施設で行う。

[3.対象患者]

対象患者は、原則として、下記の条件を満たすものとする。

@ 組織診又は細胞診により悪性腫瘍であることが確認されていること。

A 従来の標準的治療法ではもはや無効か、又はその疾患に対して確立された適切な治療がないもの。

i) 乳癌、小細胞肺癌、大腸癌、悪性リンパ腫、白血病、精巣腫瘍、卵巣癌等では一定の効果が期待できる第一選択となる標準的な併用療法や、さらに場合により第二選択の併用療法も存在するので、初回治療例を対象として治験を行うのは困難な場合が多い。従って、この場合は適当な時期の再発例又は不応例を対象として治験を行う。目標とする期待有効率は、既治療薬との関連(交差耐性等)を考慮して慎重に設定する。

ii) 有効な既存の抗悪性腫瘍薬が無い癌腫、又はそれに相当すると考えられる癌腫(既存の抗悪性腫瘍薬の有効率が低く、適切な併用療法もないもの)では、初回治療例を対象として治験を行う。

B 生理機能(造血器、心臓、肺、肝、腎等)が十分保持されていること。ただし、PS3、4の症例は除外する。

C 前治療の効果、副作用の影響が持ち越されていないもの。

D 抗腫瘍効果と副作用が観察できるよう、十分な期間(少なくとも2ヵ月以上)の生存が期待できること。

E 重篤な合併症、重複がん、薬剤の薬物動態に影響する合併症等、効果の判定を困難にする要因を有するものを避ける。

F 年齢については、原則として規定しない。ただし、生理機能や同意取得能力を考慮して判断すること。

G プライマリーエンドポイントが腫瘍縮小効果である場合は、薬剤の腫瘍縮小効果を定量的に測定するために、客観的に測定可能な病変を有するもの。

[4.対象疾患の選定と症例数の設定]

第T相試験で効果が認められた腫瘍、既存の抗悪性腫瘍薬との類似点やヒトがん細胞及びそれに由来する培養株等を用いた非臨床薬効薬理試験の結果等に基づいて、効果が期待できると考えられる癌腫を対象に試験を行う。

どの程度の活性を持つ抗悪性腫瘍薬を求めているのかを明らかにし、それに従って目標とする期待有効率を定める。容認できる閾値有効率以上の効果が示されなければ有用な抗悪性腫瘍薬としては認められないと判断される。閾値有効率及び期待有効率は、癌腫、対象となる症例の状況によっては異なるので、それぞれの設定根拠を科学的に明確にすることが必須である。

治療効果を評価するために科学的に十分な精度で評価を行うことが可能な症例数となるよう医学統計学的な推論に基づいて症例数を設定する。

通常は、期待する効果・活性のない治験薬では治験を早期に中止でき、さらに期待する有効率以上の効果を示した治験薬であれば治験を早期に終了できるよう十分に倫理面を配慮した試験計画を立案すべきである。

[5.用法・用量]

第T相試験の結果から適切と判断された用法・用量及び投与期間に基づいて試験を開始する。特に臨床薬理試験の結果から明らかにされた薬物動態に関与する臓器の状態とその影響を十分に考慮する。治験薬の安全性・有効性の評価に支障を来す薬剤、治験薬と相互作用を示す可能性のある薬剤の併用は原則として行わない。

さらに、適切な用法・用量を決定するためには、候補となる2、3の用法・用量による比較試験を行うことも検討する。

[6.統計解析]

明確に規定された対象患者で有効率を推定し、算出された推定値の精度(信頼区間等)を頑健性のある方法で算出する。また、腫瘍縮小効果を評価する際には、治験薬の投与の有無によらない全適格例、又は適切な場合には治験薬の投与を受けた適格症例を対象とし、奏効率(割合)を算出すること。

[7.薬物動態と副作用の関連の検討]

第T相試験で検討されたADMEの諸性質と特定の副作用との関連を用法・用量毎に検討することが望ましい。なお、副作用をコントロールするために薬剤毎に留意点をまとめた指針を作ることが望ましい。

[8.効果判定規準]

RECIST(Response Evaluation Criteria In Solid Tumors)による効果判定規準等を標準とし、科学の進歩に応じて、その治験薬により適切な規準を使用する。個々の症例の効果判定は、原則として判定委員会のような当該施設以外の組織の確認を受けることが望ましい。

[9.有害事象の評価規準]

有害事象の評価規準は国際的に認知されている規準(CTCAE等)を用い、その規準に従い有害事象の内容及び重症度を評価する。なお、有害事象と治験薬との関連性について評価しなければならない。有害事象のうち、治験薬との因果関係がある、又は否定できないものを副作用とする。

観察項目には、各種の一般臨床検査、及び第U相試験計画時までに判明した当該治験薬に特有と思われる検査項目を含める。

有害事象の判定も、必要に応じて判定委員会のような当該施設以外の組織の確認を受けること。

[10.誘導体及び併用療法での評価]

治験薬が既承認の抗悪性腫瘍薬の誘導体の場合は、当該既承認薬等との比較試験により治験薬の臨床的有用性が高いことを示した臨床試験成績を承認申請時に提出しなければならない。

単独療法で評価することが困難な場合、治験薬を加えた併用療法による適切な比較試験で評価を行うことも可能である。その結果、治験薬を含んだ併用療法に何らかのすぐれた特長が認められなければならない。

Y.第V相試験

[1.目的]

第V相試験は、より優れた標準的治療法を確立するために行われる臨床試験である。第U相試験において安全性と腫瘍縮小効果、又は何らかのメリット(症状緩和効果等)が確認された新規抗悪性腫瘍薬の単独又は併用療法と適切な対照群との比較試験である。この比較試験では、新規抗悪性腫瘍薬の臨床的有用性が明確に検証できるよう試験を計画しなければならない。従って、第V相試験では、生存率、生存期間等をプライマリーエンドポイントとし、他の適切なエンドポイントとして安全性、妥当性の評価された方法による症状緩和効果やQOL(Quality of Life)等に関する評価を行い、これらに対し何らかの有用性が示される必要がある。そのためには対象とする腫瘍を指定し、明確に規定された患者集団において、重要な予後因子等を考慮した適切な割付を行い、適切なデータ管理を実施して試験を遂行する必要がある。

[2.試験担当者及び試験施設]

新GCPに規定される実施医療機関としての条件を満たすこと。試験担当者及び試験施設の一般的条件は、第T相、第U相試験の規定と同様である。

[3.対象患者]

対象患者は、原則として、下記の条件を満たすものとする。

@ 組織診又は細胞診により特定の悪性腫瘍であることが確認されていること。

A 薬物療法が適応となる症例を対象とする。既治療例を対象とする場合には、前治療に関する一定の規準を設けること。

B 適切な生理機能(造血器、心臓、肺、肝、腎等)を有する症例であること。ただし、PS4の症例は除外する。

C 治療の結果に影響を及ぼすと思われる治験実施計画書に定めた重要かつ測定が実施可能な因子をすべて記録することができるもの。

D 治療効果が観察できるよう、十分な期間の生存が期待できること。

E 重篤な合併症、重複がん、薬剤の薬物動態に影響する合併症等、効果の判定を困難にする要因を有するものを避ける。

[4.対象疾患の選定と試験計画]

第U相試験が行われた癌腫で有効性と安全性が確認された場合は、その癌腫について新規抗悪性腫瘍薬の臨床的有用性を生存率等のエンドポイントを用いて適切な対照群と比較検討する。

第V相比較試験では、被験薬群に対応する対照群を設け、ランダムに割付け、薬剤の特性に応じて適切かつ可能ならば二重盲検法を採用する。対照群としては、対象癌腫に対する標準的併用療法の有無や患者の状態等によって、プラセボ投与群、対症療法群、標準的治療法群等がある。これらは医学的、科学的、倫理的に妥当なものでなければならない。

また、群間の比較性を保つため、対象癌腫に関わる重要な予後因子や臨床的有用性評価に関連する因子等を考慮した層別ランダム化又は動的割付法等、適切な方法で割付けを行う。科学的に治療効果を検証できる試験患者数を設定すべきである。

[5.統計解析]

生存期間等のプライマリーエンドポイントでの統計解析では、解析結果に頑健性のある適切な解析法を用いる。影響を及ぼすと思われる予後因子は、ランダム化の段階で調整されるべきである。万が一、不均一になった場合、又は試験中に新たに重要と考えられる予後因子が判明した場合には、適切な統計解析法を適用し主要解析結果の頑健性を検討すべきである。

他の適切なエンドポイントの場合においても、データの特性(相関、欠側値等)を把握し、適切な解析法に反映しなければならない。

[6.効果判定規準]

主要な評価変数は、生存率又は生存期間等である。なお、腫瘍縮小効果を判定する場合には、RECISTによる効果判定規準等を標準とし、科学の進歩に応じて、その治験薬により適切な規準を使用する。個々の症例の効果判定は、原則として判定委員会のような当該施設以外の組織の確認を受けることが望ましい。

[7.有害事象の評価規準]

有害事象の評価規準は国際的に認知されている規準(CTCAE等)を用い、その規準に従い有害事象の内容及び重症度を評価する。なお、有害事象と治験薬との関連性について評価しなければならない。有害事象のうち、治験薬との因果関係がある、又は否定できないものを副作用とする。

観察項目には、各種の一般臨床検査、及び第V相試験計画時までに判明した当該治験薬に特有と思われる検査項目を含める。

有害事象の判定も、必要に応じて判定委員会のような当該施設以外の組織の確認を受けること。

Z.ガイドラインの改訂

本改訂ガイドラインは、厚生労働省より日本癌治療学会の抗悪性腫瘍薬臨床評価ガイドライン改訂委員会(委員長加藤治文、東京医科大学)へ改訂検討が委託され、厚生労働省科学研究費の補助を受け改訂案が作成され、多くの検討を経て公表されるものである。今後も適当な時期に見直し、up-to-dateのものに改訂することが望まれる。

がんの診断

●がんの診断

「がん」の診断には2つの状況がある。

ひとつは臨床診断(特に病理検査)ともうひとつは集団検診(がん検診; 術後検診を含む)である。

がんを根治する上で重要な点は「早期発見」と「全摘出手術の可能性検証」が挙げられる。

言い換えると、集団検診と臨床診断とが効果的に機能して初めて、がん治療が成功に導かれる。

また全摘出手術が困難な状況において、がんの種類によって異なる有効な治療法を選択する目的でも、臨床診断は重要である。

一方、全摘出手術が成功した場合においても、再発がん、二次性がんの発生の懸念があるため、その局面においても術後定期検診は重要である。



●細胞診断・生検組織診断

「がん」の組織は顕微鏡下での観察、すなわち検鏡によって、形態から鑑別される。

判定像では多くの分裂中の細胞が観察され、細胞核のサイズや形状はばらばらであり、(分化した)細胞の特徴が消失している。

これらは細胞診でも生検組織診でも確認できる特徴である。

組織診では更に、正常な組織構造が失われていることや、周囲の組織(が一緒に採取されていれば、そこ)と腫瘍との境界が不明瞭であることが観察される。

生検組織診は、過形成、異形成、上皮内癌などと浸潤癌との鑑別に有用である。




●進行度

「がん」の進行度を表すものとして「TNM分類」や「ステージ分類」がある。

TNM分類

ステージ分類


TNM分類を元に、がんの進行度と広がりの程度を合わせて表すことができるようにと新たに作成された。

臨床に沿った分類であることから、邦訳では「臨床進行期分類」という。

ステージ0(上皮内癌)〜ステージIVの五段階で分類される。

TMN分類と同様に臓器別に細かく分類されているため、上記の分類から更に詳細に分類される場合がある。


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がん対策の目標(健康日本21-日本厚生労働省)等

●がん対策の目標(健康日本21-日本厚生労働省)

2000年、厚生労働省の健康日本21[24]によってがん対策の目標が提唱されている。

1.喫煙が及ぼす健康影響についての知識の普及、分煙、節煙。

2.食塩摂取量を1日10g未満に減らす。

3.野菜の平均摂取量を1日350g以上に増やす。

4.果物類を摂取している人の割合を増やす。

5.食事中の脂肪の比率を25%以下にする。

6.純アルコールで1日に約60g飲酒する人の割合を減少する。 「節度ある適度な飲酒」は、約20gという知識の普及。

7.がん検診。胃がん、乳がん、大腸がんの検診受診者の5割以上の増加。




●がんを防ぐための12か条(日本国立がんセンター)

1978年、日本の国立がんセンター(現・独立行政法人国立がん研究センター)は「がんを防ぐための12ヵ条」を提唱している。

1.バランスのとれた栄養をとる(好き嫌いや偏食をつつしむ)

2.毎日、変化のある食生活を(同じ食品ばかり食べない)

3.食べすぎをさけ、脂肪はひかえめに

4.お酒はほどほどに(強い酒や飲酒中のタバコは極力控える)

5.たばこは吸わないように(受動喫煙は危険)

6.食べものから適量のビタミンと食物繊維を摂る(自然の食品の中からしっかりとる)

7.塩辛いものは少なめに、あまり熱いものはさましてから

8.焦げた部分はさける

9.かびの生えたものに注意(輸入ピーナッツやとうもろこしに要注意)

10.日光に当たりすぎない

11.適度に運動をする(ストレスに注意)

12.体を清潔に



●日本人のためのがん予防法(国立がん研究センター)

国立がん研究センターは、日本人のためのがん予防法(2013年4月18日改訂版)を次のように示している。


喫煙 :たばこは吸わない。他人のたばこの煙をできるだけ避ける。

飲酒 :飲むなら、節度のある飲酒をする。

食事 :食事は偏らずバランスよくとる。

* 塩蔵食品、食塩の摂取は最小限にする。
* 野菜や果物不足にならない。
* 飲食物を熱い状態でとらない。


身体活動 :日常生活を活動的に。

体形 :適正な範囲に。

感染 :肝炎ウイルス感染検査と適切な措置を。
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2014年05月30日

がんと病因微生物・がんの遺伝的原因・がんの予防・がん予防10か条

●がんと病因微生物

一部の悪性腫瘍(がん)については、ウイルスや細菌による感染が、その発生の重要な原因であることが判明している。

現在、因果関係が疑われているものまで含めると以下の通り。


●子宮頸部扁平上皮癌 - ヒトパピローマウイルス16型、18型(HPV-16, 18)

●バーキットリンパ腫、咽頭癌、胃癌 - EBウイルス(EBV)

●成人T細胞白血病 - ヒトTリンパ球好性ウイルス

●肝細胞癌 - B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)

●カポジ肉腫 - ヒトヘルペスウイルス8型(HHV-8)

●胃癌および胃MALTリンパ腫 - ヘリコバクター・ピロリ



なお、癌に関与するウイルスは腫瘍ウイルスの項に詳しく記した。

これらの病原微生物によってがんが発生する機構はさまざまである。

ヒトパピローマウイルスやEBウイルス、ヒトTリンパ球好性ウイルスなどの場合、ウイルスの持つウイルスがん遺伝子の働きによって、細胞の増殖が亢進したり、p53遺伝子やRB遺伝子の機能が抑制されることで細胞ががん化に向かう。

肝炎ウイルスやヘリコバクター・ピロリでは、これらの微生物感染によって肝炎や胃炎などの炎症が頻発した結果、がんの発生リスクが増大すると考えられている。



またレトロウイルスの遺伝子が正常な宿主細胞の遺伝子に組み込まれる過程で、宿主の持つがん抑制遺伝子が欠損することがあることも知られている。

ただしこれらの病原微生物による感染も多段階発癌の1ステップであり、それ単独のみでは癌が発生するには至らないと考えられている。



2005年に、スウェーデンのマルメ大学で行われた研究は、ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染した人間との、予防手段を用いないオーラルセックスは口腔癌のリスクを高めると示唆した。

この研究によると、癌患者の36%がHPVに感染していたのに対し、健康な対照群では1%しか感染していなかった。



『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』誌で発表された最近の別の研究は、オーラルセックスと咽喉癌には相関関係があることを示唆している。

HPVは頸部癌の大半に関係しているので、この相関関係はHPVの感染によるものと考えられている。

この研究は、生涯に1-5人のパートナーとオーラルセックスを行った者は全く行わなかった者に比べおよそ2倍、6人以上のパートナーと行った者は3.5倍の咽喉癌のリスクがあると結論付けている。




●がんの遺伝的原因

大部分のがんは偶発的であり、特定遺伝子の遺伝的な欠損や変異によるものではない。

しかし遺伝的要素を持ちあわせる、いくつかのがん症候群が存在する。例えば、

女性のBRCA1/BRCA2遺伝子がもたらす、乳癌あるいは卵巣癌

多発性内分泌腺腫 (multiple endocrine neoplasia) - 遺伝子MEN types 1, 2a, 2bによる種々の内分泌腺の腫瘍

p53遺伝子の変異により発症するLi-Fraumeni症候群 (Li-Fraumeni syndrome) (骨肉腫、乳がん、軟組織肉腫、脳腫瘍など種々の腫瘍を起す)

(脳腫瘍や大腸ポリポーシスを起す)Turcot症候群 (Turcot syndrome)

若年期に大腸癌を発症する、APC遺伝子の変異が遺伝した家族性大腸腺腫症 (Familial adenomatous polyposis)

若年期に大腸癌を発症する、hMLH1, hMSH2, hMSH6などDNA修復遺伝子の変異が遺伝した遺伝性非ポリポーシス大腸癌 (Hereditary nonpolyposis colorectal cancer)

幼少期に網膜内にがんを発生する、Rb遺伝子の変異が遺伝した網膜芽細胞腫 (Retinoblastoma)

若年期に高頻度に多発性嚢胞腎を発症し、後に腎がんを発生する、VHL遺伝子の変異が遺伝したフォン・ヒッペル・リンドウ病

原因となる遺伝子は不詳であるが、家族内集積のみられる非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH) や原発性胆汁性肝硬変 (PBC) による肝細胞癌 (Hepatocellular carcinoma)


遺伝的素因と環境因子の双方により発癌リスクが高くなるものとして、アルコール脱水素酵素の低活性とアルコール多飲がある。

これらが揃うと頭頸部癌(咽頭癌・食道癌など)の罹患率が上昇する。

日本を含むアジアではアルコール脱水素酵素 (ADH1B) の活性が低い人が多い。




●がんの予防

子宮頸癌は発癌リスクを軽減できるHPVワクチンが日本でも認可された。

胃癌はヘリコバクター・ピロリを除菌することにより、発癌リスクを軽減できることが報告されている。

B型肝炎はエンテカビルによりHBVウイルスを減少させることで、C型肝炎はインターフェロン療法によりHCVを駆除することにより、発癌リスクを軽減できることがわかっている。



●がん予防10か条(世界がん研究基金)

2007年11月1日、世界がん研究基金とアメリカがん研究協会によって7000以上の研究を根拠に「食べもの、栄養、運動とがん予防[23]」が報告されている。

これは1997年に公表され、日本では「がん予防15か条」などと呼ばれていた4500以上の研究を元にした報告の大きな更新である。

1.肥満 ゴール:BMIは21-23の範囲に。推薦:標準体重の維持。

2.運動 推薦:毎日少なくとも30分の運動。

3.体重を増やす飲食物 推薦:高エネルギーの食べものや砂糖入り飲料やフルーツジュース、ファーストフードの摂取を制限する。

飲料として水や茶や無糖コーヒーが推奨される。

4.植物性食品 ゴール:毎日少なくとも600gの野菜や果物と、少なくとも25グラムの食物繊維を摂取するための精白されていない穀物である全粒穀物と豆を食べる。

推奨:毎日400g以上の野菜や果物と、全粒穀物と豆を食べる。精白された穀物などを制限する。

5.動物性食品 赤肉(牛・豚・羊)を制限し、加工肉(ハム、ベーコン、サラミ、燻製肉、熟成肉、塩蔵肉)は避ける。

赤肉より、鶏肉や魚が推奨される。ゴール:赤肉は週300g以下に。推奨:赤肉は週500g以下に。乳製品は議論があるため推奨されていない。

6.アルコール 男性は1日2杯、女性は1日1杯まで。

7.保存、調理 ゴール:塩分摂取量を1日に5g以下に。

推奨:塩辛い食べものを避ける。

塩分摂取量を1日に6g以下に。カビのある穀物や豆を避ける。

8.サプリメント ゴール:サプリメントなしで栄養が満たせる。

推奨:がん予防のためにサプリメントにたよらない。

9.母乳哺育 6か月、母乳哺育をする。これは母親を主に乳がんから、子供を肥満や病気から守る。

10.がん治療後 がん治療を行ったなら、栄養、体重、運動について専門家の指導を受ける。


タバコの喫煙は肺、口腔、膀胱がんの主因であり、タバコの煙は最も明確に多くの部位のがんの原因であると強調。

また、タバコとアルコールは相乗作用で発癌物質となる。
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がんの分化度・がんの発生要因・がんと生活習慣(肉食、塩分、喫煙、飲酒など)

●がんの分化度

ヒト(の身体)を構成する60兆とも言われる細胞は、1個の受精卵から発生を開始し、当初は形態的機能的な違いが見られなかった細胞は各種幹細胞を経て組織固有の形態および機能をもった細胞へと変化してゆく。

この形態的機能的な細胞の変化を分化という。

細胞の発生学的特徴の一つとして、未分化細胞ほど細胞周期が短く盛んに分裂増殖を繰り返す傾向がある。

通常、分化の方向は一方向であり、正常組織では分化の方向に逆行する細胞の幼若化(=脱分化)は、損傷した組織の再生などの場合を除き、発生しない。


しかし、がん細胞は特徴の一つに幼若化/脱分化するという性質があるため、その結果分化度の高い(=高分化な)がん細胞や、ときには非がん組織から、低分化あるいは未分化ながん細胞が生じる。

細胞検体の検査を行ったとき、細胞分化度が高いものほど臓器の構造・機能的性質を残しており、比較的悪性度が低いと言える(ただしインシュリノーマ等の内分泌腺癌など、例外はある)。

また、通常は分化度の低いものほど転移後の増殖も早く、治療予後も不良である。



化学療法は、特定の細胞周期に依存して作用するものが多いため、細胞周期が亢進している分化度が低いがんほど化学療法に対して感受性が高いという傾向がある。

なお、腫瘍細胞への作用原理・特性などは化学療法 (悪性腫瘍)の項に詳しく記した。






●がんの発生要因

「がんの発生機序」の項で述べたように、要因については様々な説がある。

悪性腫瘍(がん)は、細胞のDNAの特定部位に幾重もの変異が積み重なって発生する、と説明されることは多い。

突然変異が生じるメカニズムは多様であり、全てが知られているわけではない。

遺伝子の変異は、通常の細胞分裂に伴ってもしばしば生じていることも知られており、また偶発的に癌遺伝子の変異が起こることもありうる。

それ以外に、発癌の確率(すなわち遺伝子の変異の確率)を高めるウイルス、化学物質、放射線(環境放射線、人工放射線、X線撮影やCTスキャン等による医療被曝)… 等々等々、多様な環境因子、様々な要因が明らかになってきている。

しかし、DNA修復機構や細胞免疫など生体が持つ修復能力も同時に関与するので、水疱瘡が、水痘・帯状疱疹ウイルス (Varicella-zoster virus) の感染で起こるといったような1対1の因果関係は、癌においては示しにくいことが多い。

なお、発癌機構については発癌性の項に詳しく記した。






●がんと生活習慣(肉食、塩分、喫煙、飲酒など)

喫煙と数多くの部位のがんとの間に強い相関があることが、数十年にわたる調査での一貫した結果によって明らかになっている。

数百の疫学調査により、たばことがんとの関係が確認されている。

アメリカ合衆国における肺がん死の比率とたばこ消費量の増加パターンは鏡写しのようであり、喫煙が増加すると肺がん死比率も劇的に増加し、近年喫煙傾向が減少に転じると、男性の肺がん死比率も減少している。



日本政府が日本たばこ産業の株の半数以上を保有しているため、喫煙規制や禁煙に関する動きが進みにくかったという指摘が渡邊昌によってなされており、がんの死亡率の1位が肺がんとなっている。



米国国立がん研究所の公開資料によると、「食事の違いはがんの危険を決定づける役割を持っている。タバコ、紫外線、そしてアルコールは顕著な関係が識別できるのに対して、食事の種類とがんに罹る危険性との関係を明らかにすることは難しい。脂肪とカロリーの摂取を制限することは、ある種のがんの危険率を減少させる可能性があると明らかとなっている。

(脂肪に富んだ)大量の肉と大量のカロリーを摂取する人々は、特に大腸がんにおいて、がんの危険が増大することが図より見て取れる。」と指摘している。



いわゆる「食生活の欧米化」は、乳房や前立腺や大腸のがんとの関連が強いと考えられ、実際に部位別の死亡率は増えている。

つまり、近年になって日本人に大腸癌や乳癌が増えてきた原因のひとつには、食生活の欧米化による動物性脂肪の摂取の増加と食物繊維の摂取不足がある、と指摘されているのである。

大腸での便の停滞時間が長くなって発癌物質が大腸粘膜と長時間接するため大腸癌が多くなったと考えられているのである。



ストレス:ストレスを長期に渡って受け続けると、血流の低下、免疫力の低下につながり、がんになる確率が上がる。

1997年9月、アメリカの心理学者リディア・テモショック、ヘンリー・ドレイア等によって継続的な強いストレスとそれを誘発する性格ががんになる確率を上げる、と発表し、彼らはがんになる確率を誘引するこの性格を「タイプC」と定義した。


低体温症:がん細胞は低い温度を好むため、平常時体温が36.0℃を下回る人はがんになる確率が上がる。

WHOと国際がん研究機関 (IARC) による、「生活習慣とがんの関連」についての報告がある。
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2014年05月25日

がん発生に関与する遺伝子群

●がん発生に関与する遺伝子群

現在、がん抑制遺伝子といわれる遺伝子群の変異による機能不全がもっともがん発生に関与しているといわれている。

たとえば、p53がん抑制遺伝子は、ヒトの腫瘍に異常が最も多くみられる種類の遺伝子である。

p53はLi-Fraumeni症候群 (Li-Fraumeni syndrome) の原因遺伝子として知られており、また、がんの多くの部分を占める自発性がんと、割合としては小さい遺伝性がんの両方に異常が見つかる点でがん研究における重要性が高い。



p53遺伝子に変異が起こると、適切にアポトーシス(細胞死)や細胞分裂停止(G1/S細胞周期チェックポイント)を起こす機能が阻害され、細胞は異常な増殖が可能となり、腫瘍細胞となりえる。

p53遺伝子破壊マウスは正常に生まれてくるにもかかわらず、成長にともなって高頻度にがんを発生する。

p53の異常はほかの遺伝子上の変異も誘導すると考えられる。

p53のほかにも多くのがん抑制遺伝子が見つかっている。



一方、変異によってその遺伝子産物が活性化し、細胞の異常な増殖が可能となって、腫瘍細胞の生成につながるような遺伝子も見つかっており、これらをがん遺伝子と称する。

これは、がん抑制遺伝子産物が不活性化して細胞ががん化するのとは対照的である。

がん研究はがん遺伝子の研究からがん抑制遺伝子の研究に重心が移ってきた歴史があり、現在においてはがん抑制遺伝子の変異が主要な研究対象となっている。


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2014年05月24日

がんの疫学

●悪性腫瘍に関連する医学的分類

悪性腫瘍(malignant tumor)の用語は病理学において以下のように分類される。

#癌腫(羅: carcinoma):上皮組織由来の悪性腫瘍

#肉腫(羅: sarcoma):非上皮組織由来の悪性腫瘍

#その他:白血病など




●がんの疫学

日本では1981年から死因のトップとなり、2010年度は死因の約3割を占めている。

世界保健機関 (WHO) によれば、2005年の世界の5800万人の死亡のうち、悪性腫瘍による死亡は13%(760万人)を占める。

死亡原因となった悪性腫瘍のうち、最多のものは肺がん(130万人)で、胃がん(100万人)、肝がん、大腸がん、乳がんなどが続く。

悪性腫瘍による死亡は増加し続け、2030年には1140万人が悪性腫瘍で死亡すると予測されている。

WHOによると、禁煙・健康的な食生活・適度な運動により、悪性腫瘍による死亡のうち、40%は予防可能であるとされる。

特に喫煙は予防可能な死亡の最大の原因とされ、肺がんの80-90%が喫煙に起因する。

受動喫煙も肺がんの原因である。

後述環境と食事・予防も参照


●がんの発生機序

悪性腫瘍が生じるしくみについては様々な説明がある。

比較的多い説明というのは、遺伝子におきた何らかの変化・病変が関わって生じている、とする説明である。

では、その遺伝子の何らかの病変がどのように生じているのか、ということに関しては、実に様々な要素・条件が指摘されていて、研究者ごとにその指摘の内容や列挙のしかたは異なる。



数百年前に比べれば、かなり多くのことが判ってきてはいるものの、現在でも悪性腫瘍発生のしくみの全てがすっきりと解明されているとも言えず、研究者を越えて同一の考え方が共有されているとも言い難い。


発生機序について、どの説明でもほぼ共通して言及されている内容というのは、何らかの遺伝子の変化と細胞の増殖の関係である。

その説明というのは例えば以下のようなものである。

身体を構成している数十兆の細胞は、分裂・増殖と、「プログラムされた細胞死」(アポトーシス)を繰り返している。

正常な状態では、細胞の成長と分裂は、身体が新しい細胞を必要とするときのみ引き起こされるよう制御されている。

すなわち細胞が老化・欠損して死滅する時に新しい細胞が生じて置き換わる。

ところが特定の遺伝子(p53など、通常複数の遺伝子)に変異(=書き変わること)が生じると、このプロセスの秩序を乱してしまうようになる。

すなわち、身体が必要としていない場合でも細胞分裂を起こして増殖し、逆に死滅すべき細胞が死滅しなくなる。



ただし、数十兆個の細胞で構成されている人体全体では、実は、毎日数千個単位で遺伝子の病変は生じており、それでも健康な人の場合は一般に、体内に生じた遺伝子が病変した細胞を、なんらかのしくみによって統制することに成功しており(免疫やいわゆる自然治癒力)、遺伝子が病変した悪性のがん細胞が 体内にある程度の個数存在するからといって、必ずしも人体レベルで悪性腫瘍になるというわけでもない、ということも近年では明らかにされている。



一方で「全ての遺伝子の突然変異ががんに関係しているわけではなく、特定の遺伝子(下述)の変異だけが関与している」と述べたり主張したりする研究者もいるが、他方で、「発癌には様々なプロセスが関わっている」「がんに関与する因子ならびにがんに至るプロセスは単一ではなく、複数の遺伝子変異なども含めて様々な機構の不具合が関与する」とする研究者もいるのである(多段階発癌説)。


臨床の現場で「悪性腫瘍」と判断される段階に至るまでには、個々の細胞の遺伝子の変化以外にも、人体のマクロレベルで働いている機構(例えば、がん化した細胞を制御する免疫機構、広く自然治癒力とも呼ばれているしくみなど)が不具合に陥ってしまうことも含めて、さまざまな内的・外的な要因が複雑に作用している、とも指摘されているのである。


近年では大規模統計、疫学的な調査によって、人々の生活環境に存在する化学物質などの外的な要因や、その人の生活習慣など、様々な条件・要因が悪性腫瘍発生の要因として働いている、と分析されるようになっている(後述)。


また、今日では、最近研究が進んだエピジェネティック研究も反映して、遺伝子のエピジェネティック変化が要因となることもある、と指摘されることもある。

このように悪性腫瘍の発生機序については、諸見解があるものの、いずれにせよ、そうして生じた過剰な細胞は組織の塊を形成し、臨床の場でも認識できるようになり、医師等によって「腫瘍」あるいは「新生物」と呼ばれるようになる。

そして、腫瘍は「良性(非がん性)」と「悪性(がん性)」に分類されることになる。

良性腫瘍とは、まれに命を脅かすことがあるが(特に脳に出来た場合)、身体の他の部分に浸潤や転移はせず、肥大化も見られないものをそう呼んでいる。

一方、悪性腫瘍は浸潤・転移し、生命を脅かすものをそう呼んでいるのである。


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2014年05月23日

「がん」研究に関する歴史

●がん理解の歴史の概略

がんという病気を理解しようとする人たちは古代からおり、悪戦苦闘が繰り広げられてきた[7]。

(上述のごとく)cancerという言葉の歴史は古いもので、古代ギリシア語のkarkinos カルキノス(=カニ)に由来している。

あちこちに爪を伸ばし食い込んでゆく様子を、その言葉で表現したのである。

がん研究、腫瘍学を指す「oncology」という言葉も、古代ギリシア語のoncos オンコス(=塊 かたまり)を語源としている。



古代ローマのガレノス(2〜3世紀ごろ)は、がんは四体液のひとつの黒胆汁が過剰になると生じる、と考えた。

(ガレノスというのは1500年ころまでは、医学の領域で「権威」とされた人物である)。


ガレノスの後継者のなかには、情欲にふけることや、禁欲や、憂鬱が原因だとする者もいた。

また同後継者には、ある種のがんが特定の家系に集中することに着目して、がんというのは遺伝的な病苦だ、と説明する者もいた。




18世紀後半をすぎるころになると、がんの一因として環境中の毒(タバコ、煙突掃除夫の皮膚につく煙突の煤、鉱坑の粉じん、アニリン染料が含有する化学物質 等)もあるのでは、とする説が、多くの人によって提唱された。

19世紀なかごろに、フィラデルフィアの名外科医のサミュエル・グロスは「(がんについて)確実にわかっていることは、我々はがんについて何も知らない、ということだけである」と書いた。

そして、そのような「何も知らない」という状況は、19世紀末の時点でも、ほとんど変わっていなかった。




その後1世紀ほどを経た現在、がんについてある程度のことは分かったと言える状態になった。

だが、その理解は一気になされたわけではなく、理解を進めるたびに研究者の間で新たな疑問が登場し、科学的な知識が徐々に増えてきた、という状態なのである。

がん研究は研究者たちにとって、多くの困難と挫折に満ちたものであった。


20世紀初頭には、「感染症は特定の微生物によって引き起こされる」という説を支持する例が実験によって多数確認されため、他の病気も容易に解明されるだろうと考えたり、がんも解明されるだろうと予想する人は多かった。

だが、そのような予想は安易すぎたのである。




●がんに関するウイルス説を巡る歴史

「がんは感染症ではない」とも考えられていた。

というのは白血病など、患者から家族や医療関係者に伝染することがないためである。

だが、動物(の個体)からとった腫瘍を他の動物(の個体)に移植すると癌が誘発されることが判った19世紀末以降は、がんにも感染性の病原体があるのかも知れないと考える人も出てきて、彼らは20世紀初頭までに、原生動物・バクテリア・スピロヘータ・かびなどを調べた。

それらの研究はうまくゆかず、がんの原因に感染症があると考える諸説は信用を失いそうになった。

だが、ペイトン・ラウスが腫瘍から細胞とバクテリアを取り除いた抽出液をつくることを思いつき、それを調べれば細胞の他に作用している因子が見つかるかも知れないと考え、ニワトリの肉腫をろ過した抽出液を健康なニワトリに注射し、その鶏にも肉腫が発生するのを実験によって確認し、その腫瘍は、微小な寄生生物、おそらくウイルスに刺激されて生じたものかも知れない、とした。

当時はウイルスの正体は分かっておらず、「…でないもの」という否定表現でしか記述できなかった。

科学者はがんが感染するという実験的事実から、未知の病原体が存在するであろうことにも気付いたのである。



その後ウサギでも同様の実験結果が得られたが、腫瘍を伝染させることに成功したのは主にニワトリ(やウサギ)の場合に限られていたので、やがて、がんの一因にウイルスがあるとする説は評判が悪くなってしまい、これを支持する科学者は評判を落としてしまいかねないような状況になった。

異端の説だと見なされ、疑似科学者扱いされかねない空気が科学界に蔓延したのである。




ジャクソン研究所(英語版)というのは、1929年に設立された組織で、今日では基礎医学研究用の規格化マウスを供給する組織として米国最大のものだが、その研究所での がん発生研究のプログラムというのは、「問題は遺伝子であって、ウイルスではない」という前提のもとに行われていた。

だが、同研究所のジョン・ビットナー(英語版)が、マウスのある種のがんは、母乳中の発がん因子が授乳を通じて子に移される仕組みであるという、ウイルスが関与しているという証拠を偶然に発見した。

だが、当時の科学界は上述のようにウイルス説を異端視していたのでビットナーは躊躇して、それを「ウイルス」とは呼ばず、あえて「ミルク因子」と呼んだ。



ルドウィク・グロス(英語版)も、ウイルスが癌の原因になることがあることを、マウスの白血病がウイルスによってうつることを示す実験を行うことで確かめ、それを発表・報告したのだが、がん研究者の大半はその報告をまともに受け取らず、データ捏造をしているのでは、と考える者すらいた。

今流に言えば、ワシントンにある研究公正局に出頭を求められかねないような扱いをされたのである。



アメリカ国立癌研究所が設立された時期、公衆衛生局局長の諮問委員会は、がんの原因としてウイルスは無視できると結論づけた(結論づけてしまうような有様だった)。

「《ミルク因子》というのは、ウイルスだ」と解釈することを科学的なこととして認め、ウィルス説を科学的にまじめに検討すべきだ、という認識ができてきたのはようやく1940年代末のことだった。


状況を変えた人物はジャコブ・ファース(Jacob Furth、1896-1979)[注 1]であった。

ファースはすでに高名な科学者であったが、その彼がグロスの実験を、それに用いるマウスの種類まで正確になぞることで、実験に再現性があること、そして事実であることを証明した。

それによって基礎医学者たちがようやく、悪性腫瘍にウイルスが関与することがあるということを理解するようになったのである。

かくして、長らく異端者のように扱われてきたペイトン・ラウスは、1966年に85歳でノーベル医学生理学賞を受賞した。


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