●抗がん剤について(2)
●●代謝拮抗剤●●
●ピリミジン代謝阻害薬
●チミジル酸シンターゼ阻害薬
これはフルオロウラシル (5-FU) とフロロピリジン系抗真菌薬であるフルシトシン(5-FC、アンコチル)が含まれる。
フルオロウラシルは乳癌や消化管の癌、皮膚の前悪性角化症や表皮の多発性基底細胞癌でよく用いられる。
臨床試験によりフルオロウラシルとフォリン酸(ロイコボリン)の併用がフルオロウラシル単独よりも効果が高いことが明らかになり、それを応用した大腸癌のレジメがFOLFOXである。
FOLはフォリン酸(LV、ロイコボリン)、Fはフルオロウラシル、OXはオキサリプラチン(L-OHP、エルプラット)である。
有名な方法としてはFOLFOX4とそれの投与方法を簡略化したFOLFOX6がある。
FOLFOX6でオキサリプラチンの代わりにイリノテカン(CPT-11、カンプト)を用いるようにしたのがFOLFIRIである。
欧米では中心静脈リザーバーを用いて外来治療で行うのが通常だが、日本では入院して行う。
日本では承認の問題でフォリン酸 (LV) の代わりにレボホリナート(l-LV、アイソボリン)という光学異性体を用いる。
近年はVEGFに対するモノクローナル抗体であるベバシツマブ(アバスチン)を併用することもある。
フルシトシンは真菌内でフルオロウラシルに変換され、動物内で変換されないことから抗真菌薬として用いられることがあるが、耐性化しやすく単剤で使われることはまれである。
髄液移行性が良く、アムホテリシンB(ファンギゾン)とシナジーがあるため、クリプトコッカス髄膜炎では併用することはある。
●プリン代謝阻害薬
●IMPDH阻害薬
6-メルカプトプリン(6-MP、ロイケリン)とそのプロドラッグであるアザチオプリン(AZA、イムラン)が知られている。
6-メルカプトプリンはAPLの維持療法やALLの強化療法、維持療法で用いることがある。
アロプリノールとの併用で作用、副作用とも増加することが有名である。
免疫抑制薬としての適応も有名である。
特にアザチオプリン自己免疫性疾患ではよく使われる。
●アデノシンデアミナーゼ (ADA) 阻害薬
ペントスタチン(コホリン)が知られている。
ATLや有毛細胞白血病で用いられることがある。
●リボヌクレオチドレダクターゼ阻害薬
ヒドロキシウレア(HU、ハイドレア)がこれに含まれる。
ヌクレオチドをデオキシヌクレオチドとする反応を阻害する。
鎌状赤血球や頭頸部腫瘍、骨髄増殖性疾患で適応がある。
放射線増感薬(特に頭頸部癌)として用いられることがある。
二次性白血病の原因となるともされている。
●ヌクレオチドアナログ
●プリンアナログ
チオグアニン、リン酸フルダラビン(F-Ara-A、フルダラ)、クラドリビン(2-CdA、ロイスタチン)が含まれる。
リン酸フルダラビンはCLLやFLに効果があるとされている。
しかし日本においてはFLに対して適応がなく、クラドリビンが用いられる。
●ピリミジンアナログ
シタラビン(Ara-C、キロサイド)やゲムシタビン(GEM、ジェムザール)が含まれる。
シタラビンはAMLの寛解導入や維持に用いられ、シクロホスファミドとシナジーを形成する。
またシタラビンもBBBを通過するので、中枢神経DLBCLで用いることがある。
ゲムシタビンは膵臓癌の治療で用いられる。
●その他の代謝拮抗薬
●L-アスパラギナーゼ
血中のL-アスパラギンを分解することにより、アスパラギン要求性の腫瘍細胞を栄養欠乏状態とする。
急性白血病や悪性リンパ腫で用いられる。
凝固異常や急性膵炎を起こすことがあるので、採血にてモニタリングが必要である。
Amyおよび凝固系のモニタリングを行いATIII>70となるようにする。
●●●●● トポイソメラーゼ阻害薬 ●●●●●
I型トポイソメラーゼは1本鎖DNAのらせん制御、II型トポイソメラーゼは2本鎖DNAのらせん制御をすると考えられており、作用が複雑で多目的な働きをするII型トポイソメラーゼを阻害したほうが効果があると考えられている。
●カンプトテシンとその誘導体(I型トポイソメラーゼを阻害する)
*イリノテカン(CPT-11、カンプト)
*ノギテカン(NGT ハイカムチン)
用量規定因子は消化器毒性と骨髄抑制である。
特に下痢は致死的になることもある。
FOLFIRIでは止痢剤としてロペミンを併用することがしばしばある。
骨髄抑制も非常に強い。
●アントラサイクリン系
アントラサイクリン系はDNA構造を直接破壊する。
化学療法で最も細胞障害性が高いもののひとつであると考えている。
ドキソルビシン(DER、ADR、アドリアシン)が含まれる。
DNA内へ挿入(インターカレーション)することによって、II型トポイソメラーゼ阻害を行う。
心筋内でフリーラジカル産出を促し、心筋細胞膜を破壊、うっ血性心不全を招くことが有名である。
DXR投与中は100mg/m2ごとに心電図、200mg/m2ごとに心エコーを実施し、心毒性をチェックする。
●エピポドフィロトキシン系
アントラサイクリン系と同様に、II型トポイソメラーゼ阻害を行う。
エトポシド(VP-16、ETP、ラステッド、ベプシド)が含まれる。
一般にシスプラチンといったアルキル化薬とII型トポイソメラーゼ阻害薬を併用すると、シナジーを得る。
理由は、傷害されたDNAを修復するにはトポイソメラーゼの作用が必要(ポリメラーゼとの相互作用のため)なのだが、そこまでブロックされるとアポトーシスされやすいということである。
●キノロン系薬物
レボフロキサシン(クラビット)やシプロフロキサシン(シプロキサン)などが含まれる。
原核細胞のII型トポイソメラーゼ(これをDNAジャイレースという)とIV型トポイソメラーゼを阻害し、細菌を傷害する。
一応はグラム陽性菌にはIV型トポイソメラーゼ、グラム陰性菌にはII型トポイソメラーゼ阻害が効いていると考えられている。
AUCに比例して効果を示す抗菌薬なので、1日1回投与のほうが効果的である。