2014年07月13日

固形がんに対する化学療法の効果判定

●化学療法 (悪性腫瘍)について(7)

●支持療法

腫瘍崩壊症候群

重症リンパ腫のような重篤な腫瘍の場合、患者によっては悪性腫瘍細胞が急速に崩壊し、腫瘍崩壊症候群を発症する。

腫瘍崩壊症候群は治療しないと致命的な危険な副作用である。

メイロンによる尿のアルカリ化大量輸液を行うことが多い。




●特徴的な支持療法

HD-MTXの支持療法

大量メソトレキセート療法は支持療法の進歩によって可能となった治療である。

BBBの存在によってリツキサンといった分子標的薬が届かない中枢性悪性リンパ腫の治療などで用いられる。

酸性尿下ではメソトレキセートの溶解性が低下し、尿細管内にMTXの結晶が沈着し排出障害を招く。

尿pHが7よりも小さい時は輸液500mlあたりメイロンを1A追加投与を行い尿のアルカリ化を図る。

また活性型葉酸誘導体であるロイコボリン(フォリン酸)を同時投与することで正常細胞の破壊を防ぐことができ、フォリン酸レスキュー療法と言われている。

葉酸代謝拮抗薬が含まれるST合剤はメソトレキセート投与中は行わないのが一般的である。

48時間後のMTX血中濃度1未満、72時間MTX血中濃度が0.1未満でなければロイコボリンを追加、投与延長を行う。



HD-AraCの支持療法

シタラビンの大量療法も特徴的な支持療法が必要である。

シタラビン症候群ともいわれるが投与後4〜6時間後に発熱、全身倦怠感、骨痛、筋肉痛、皮疹、結膜炎が出現することがある。

ステロイド点眼薬を予防的に用いることが多い。出

現時は全身ステロイドが有効とされている。



シクロホスファミドとイホスファミド

副作用に出血性膀胱炎がある場合である。

これらの抗がん剤は大量輸液を行い、さらに投与直前、4時間後、8時間後にウロテキサミン(メスナ)を投与する。

抗がん剤投与中は尿潜血をチェックし尿潜血が+2以上であれば輸液量を増やしたりする。




●固形がんに対する化学療法の効果判定

化学療法の効果判定は、腫瘍縮小率、もしくは延命期間を指標として行う。

化学療法の本来の目的は延命効果であり、比較試験では延命期間が重要視される。

一方、日常診療ではより簡便な腫瘍縮小率を用いる。

国際的にはWHOガイドラインもしくはRECISTガイドラインが用いられるが、日本では独自の効果判定基準が広く用いられている(各々の「癌取扱い規約」で定められている)。



●日本癌治療学会固形がん化学療法直接効果判定基準(1986)

著効(完全反応、完全寛解、CR(=Complete Response) ともいう)

画像上、全てのがんが消失した状態が4週間以上持続すること。

なお、「画像上、全てのがんが消失した」=「完治」とは限らない。

むしろ画像に写らないサイズのがんが残っている可能性が相当ある。



有効(部分反応、部分寛解、PR(=Partial Response) ともいう)


がんの大きさを2方向で評価できるならば、がんの面積の縮小率が50%以上になり、それが4週間以上持続すること。

がんの大きさを1方向でしか評価できないならば、がんの長さの縮小率が30%以上になり、それが4週間以上持続すること。



不変(NC(=No Change)ともいう)


がんの大きさを2方向で評価できるならば、がんの面積が50%未満の縮小〜25%以内の増大の範囲で、かつ、新病変が出現しない状態が4週間以上持続すること。

がんの大きさを1方向でしか評価できないならば、癌の長さがの30%未満の縮小〜25%以内の増大の範囲で、かつ、新病変が出現しない状態が4週間以上持続すること。


進行(PD(=Progressive Disease))

がんの面積や長さが25%以上増大、新病変の出現奏効率


(著効+有効)となる率。

化学療法が効いて完治した率ではない。

こうした効果判定の用語は、がんの縮小のみに着目しており、完治したとか、寿命が延びたとかいうことは着目していないことに注意すること。

日本癌治療学会では2003年以降、RECISTガイドラインの使用を推奨している。


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2014年07月11日

化学療法 (悪性腫瘍)について(6)

●化学療法 (悪性腫瘍)について(6)

●支持療法

●消化器症状の支持療法

口内炎化学療法による粘膜障害や感染によって難治化しやすい。

化学療法を行う場合は口腔内ケアを行い、また極端に熱いものの摂取を控える。


嘔吐延髄に存在する嘔吐中枢(VC)は嘔吐に関連した反応を制御する反射中枢である。

延髄にあるCTZにドパミン、セロトニン、アセチルコリン、サブスタンスPのレセプターがあり、この部位も化学療法の嘔吐に関与するとされている。

化学療法による嘔吐は3つの機序が提唱されており、基本的には発症時期で分類する。

acute emesisは抗がん剤投与開始から1時間〜24時間以内に起こる嘔吐である。


CDDPによるものが有名である。CMZの5-HT3受容体や消化管壁の5-HT3受容体の刺激によって起こると考えられている。

5-HT3受容体拮抗薬(ドラセトロン (dolasetron)、グラニセトロン (Granisetron)、オンダンセトロン (Ondansetron))が使用される。

デキサメタゾンを併用することもある。

late emesisは抗がん剤投与から24〜48時間ごろより始まり5日ほど持続することもある嘔吐である。

機序は不明であるがセロトニンの関与は薄く5-HT3受容体拮抗薬は効果が薄い。通常はメトクロプラミド(Metoclopramide) やデキサメタゾンを用いて対処することが多い。

anticipatory emesis(予測性嘔吐)は前回の化学療法の悪心コントロールが不良であった場合に起こりやすい、化学療法投与前に出現する嘔吐である。



精神的要因が大きく、大脳皮質がVCを刺激するためと考えられている。

ロラゼパムやアルプラゾラムと投与にて軽快する。

ある調査研究、あるいは患者団体の要望によると、マリファナ療法から派生したカンナビノイドを使用すると、化学療法の吐き気や嘔吐が減弱し、患者は食事をとることができるようになるとされている。


下痢下痢の機序は2つ考えられている。

化学療法当日に出現する早発性下痢は抗がん剤によって、自律神経が刺激され蠕動が亢進する結果おこるコリン作動性の下痢である。

化学療法後数日〜2週間程度で起こる遅発性下痢の場合は消化管粘膜障害によるものである。

この場合は好中球減少の時期と重なるため感染症に注意が必要である。

下痢に関してはロペラミドを用いることが多い。
ラベル:副作用対策
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2014年07月09日

化学療法 (悪性腫瘍)について(5)

●化学療法 (悪性腫瘍)について(5)

●支持療法

●感染症の支持療法

発熱性好中球減少症では感染症の進行が急激であり、また典型的な身体所見が欠如することもしばしば認められる。

カリニ肺炎などの予防目的としてST合剤を予防投与したり、抗真菌薬シロップを用いることもある。


●骨髄抑制の支持療法

原理的には、全ての化学療法の投薬は免疫系の抑制を引き起こし、骨髄機能を麻痺させ赤血球や血小板などの血液細胞(血球)を減少させる。

赤血球や血小板の減少は、生じたとしても輸血により補うことができる。

好中球減少症(Neutropenia; 好中球が 0.5 × 109/リットル以下に減少)は合成G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子 granulocyte-colony stimulating factor)で補える。

場合によっては投薬により重篤な骨髄抑制が発症し、造血幹細胞(血球の幹細胞)が破壊される。

それは他者あるいは自己からの造血幹細胞移植が必要になることを意味する。



自己移植(自己骨髄移植または自己末梢血幹細胞移植)は治療前に患者から取り出した造血幹細胞を培養し、化学療法後に再度注入する方法である。

他者からの同種造血幹細胞移植はドナー探しが必要となる。



患者によっては骨髄障害によって病状が進行する場合もある。

重篤な骨髄抑制を防ぐために多くの化学療法で骨髄抑制の強さは回復可能なレベルに保たれている場合が多い。



末梢血中の好中球の寿命は約8時間であり、白血球数は化学療法試行後7〜14日で最低値となる場合が多く、ナディア(nadir)期といわれる。

血小板の寿命は約7日であり、血小板減少は化学療法後約1週間から出現し2〜3週でナディアになる場合が多い。

赤血球の場合は寿命が120日と長いため貧血は数週から数か月で緩徐に発現する場合が多い。


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2014年07月07日

白血病の疫学

●白血病の疫学

世界のどの民族でも多い急性骨髄性白血病では世界平均の罹患率は10万人あたり年間2.5-3人といわれ日本よりやや低くなっている。

若い患者もいる白血病といえども高齢者ほど罹患率は高いので高齢人口割合が高くなると白血病の罹患率も高くなる。


また慢性リンパ性白血病は欧米では急性骨髄性白血病と並んで多い白血病だがアジアでは少なく、成人T細胞白血病はカリブ海諸国、アフリカ中部大西洋沿岸諸国、及び日本で見られるなど地域・民族によって白血病発症の特性は違い、白血病全体ではアジア人よりも欧米人の方が罹患率は高い傾向があるなど、白血病の罹患率は民族や年齢、性別によってその内容は異なる。



●日本の白血病発症率

1997年の日本の統計では全白血病の発症率は年間に男性で10万人あたり7人、女性で10万人あたり4.8人、合計で年間に人口10万人あたり約6人程度と見られている。

そのうち急性白血病が10万人あたり4人程度、急性白血病では大人で80%子供で20%が急性骨髄性白血病 (AML)、大人で20%子供で80%が急性リンパ性白血病 (ALL) で全体としては2/3が急性骨髄性白血病、1/3が急性リンパ性白血病といわれている。


つまり ALL では小児が多く、AMLでは大多数が成人で発症年齢中央値が60歳である。

慢性骨髄性白血病の発症率は10万人あたり1-1.5人程度、慢性リンパ性白血病は白血病全体の1-3%程度で少ないと見られている。

しかし日本では少ない慢性リンパ性白血病は欧米では全白血病の20-30%を占めている。


また、小児全体では白血病の発症率は年間10万人あたり3人程度とされるが、小児では慢性白血病は少なく5%程度で、小児の急性白血病の80%はリンパ性であり、男児にやや多い。

高齢者人口が1997年より増えた2005年の日本の統計では高齢化によって白血病も増えており、2005年国立がん研究センターの統計では日本では年間9000人が白血病に罹患し、人口10万人あたり7.1人の罹患率となっている。

そのうち男性が約5300人女性が約3700人で男性の10万人あたり罹患率は8.3人、女性では5.9人となっている。

2005年の日本では67万6千人が新たにがんに侵され、人口10万人あたりでは年間529人のがん罹患率なので白血病は全がんの1.3%を占めている。

地域別では九州・沖縄で白血病が多いがこれは地域特性のある成人T細胞白血病(後述)の発症率の差によるものである。

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2014年07月04日

化学療法 (悪性腫瘍)について(4)

●化学療法 (悪性腫瘍)の用量

化学療法剤の用量については難しさがある。

少なすぎれば腫瘍に効果が無く、多すぎれば患者が耐えられない毒性(副作用や好中球減少症 neutropenia)が発現する。

そのために多くの病院では用量や毒性の補正のガイダンスとなる詳細な「投薬計画 (dosing schemes)」を作成する。



多くの場合には、患者の体表面積値 (body surface area, BSA) で用量を補正する。

体表面積値は身長と体重から計算で求めた、体容積の概算値である。

普通BSA値は、実際に計測するよりも、計算するか数表 (nomogram) を使って計算する。



●化学療法 (悪性腫瘍)の投与

多くの化学療法は静脈内投与により行われる。

患者によったり、がんの種類・段階および化学療法の種類と用量によって、静脈内投与化学療法は入院になるか通院になるかが決まる。

プレドニゾンやメルファランなど少数の薬剤は経口投与である。

また、中心静脈により投与がされることもあり、その場合、末梢静脈の炎症を予防しつつ確実に循環器系に薬剤を投与できる。


●化学療法 (悪性腫瘍)の副作用


有害事象共通用語基準 v4.0に詳細に記載されている。

治療は患者の身体的な拒絶を受ける。

現在の化学療法技術では副作用の範囲は主に身体の細胞分裂が亢進した細胞にたいして生じる。

(薬剤特有の)重大な副作用を次に示す。

頭髪を失う

吐き気ならびに嘔吐

下痢または便秘貧血(致死的な重篤度の)

感染や敗血症を引き起こすほどの免疫系の抑制出血


二次がん

化学療法は心臓血管系疾患のリスクをも増大させ、時として二次がんの原因となる。

このため「抗がん剤は発がん剤」などと批判する人もいる。

しかし、二次がんにならない確率の方がずっと高い上に、不幸にして二次がんになるとしても通常は何年も先のことである。

既にがんになってしまった人が、二次がんを過剰に心配し、今のがんに効くかもしれない化学療法を否定してしまうというのは合理的とは言いがたいであろう。

心毒性

肝毒性

腎毒性

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2014年07月02日

早期の腫瘍縮小と効果の深さが転移を有する大腸癌の生存延長に寄与、

■■■■【抗がん剤のニュース】2014/07/02■■■■


◆早期の腫瘍縮小と効果の深さが転移を有する大腸癌の生存延長に寄与、
  FIRE-3試験データを独立画像評価委員会が解析
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_--_222027_--_74784_--_1


◆進行・再発の結腸・直腸癌へのTAS-102の有効性を証明した
  フェーズ3試験RECOURSEの詳細が明らかに
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_--_222027_--_74784_--_2


◆KRAS野生型の大腸癌のファーストライン治療として化学療法+ベバシズマブと
  化学療法+セツキシマブはPFSの詳細な評価でも差はなし、CALGB試験より
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_--_222027_--_74784_--_3


◆標準治療施行後に進行した大腸癌のアジア人患者でもレゴラフェニブがOSを改善
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_--_222027_--_74784_--_4


◆抗グアニル酸シクラーゼC抗体-薬物結合製剤MLN0264がGCC発現進行胃腸系癌に
  有用である可能性
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_--_222027_--_74784_--_10



◆進行胃癌のセカンドライン治療としてramucirumab+パクリタキセルは
  QOLの評価でも良好な結果
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_--_222027_--_74784_--_11



◆大腸癌のRAS遺伝子変異検査キットのRASKET KITは高感度で高特異性を示す
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_--_222027_--_74784_--_12



◆85歳以上の超高齢者の大腸癌に対する腹腔鏡下手術は安全に施行可能
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_--_222027_--_74784_--_13



◆進行胃癌のセカンドライン治療としてのramucirumab+パクリタキセルは
  欧米人患者のサブグループ解析でも有効性と安全性が一致
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_--_222027_--_74784_--_14



◆転移を有する食道癌にネダプラチン、5-FU、ドセタキセルを併用する
  UDONレジメンが有用な可能性
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_--_222027_--_74784_--_15



◆切除不能または再発胃癌にS-1とnab-パクリタキセルの併用が有用である可能性
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_--_222027_--_74784_--_16



◆nab-パクリタキセルとゲムシタビンの併用は進行膵癌のファーストライン治療
  として膵内の原発腫瘍の部位によらず有効
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_--_222027_--_74784_--_17



◆ゲムシタビン既治療の膵癌にナノリポソーム型イリノテカンMM-398と
  5FU/ロイコボリンの併用が有効
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_--_222027_--_74784_--_18



◆進行膵癌でCRP高値の患者のセカンドライン治療として
  ruxolitinibとカペシタビンの併用が有望
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_--_222027_--_74784_--_19



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2014年07月01日

超お勧め本★乳がんと診断されたらすぐに読みたい本 ~私たち100人の乳がん体験記

『がんになったらまず読む本』 『家族ががんになったらまず読む本』




超お勧め本★乳がんと診断されたらすぐに読みたい本 ~私たち100人の乳がん体験記


いま、年間に約6万人の方が「乳がん」と診断されています。

突然の診断に驚き、これからどうなるのかと不安になる方が多いと思います。

そんなときに役に立つ本が作りたい、何より“仲間がいる"と思うだけでどれだけ救われることか――そんな思いから誕生した本です。



本書は2部構成になっています。

前半が著者の体験談で、乳がんの発覚から手術、抗がん剤治療、リハビリ、ホルモン療法といった治療全般に関すること。

また、治療そのものの体験だけではなく、それから気になる治療費のこと、髪の毛(抗がん剤治療で脱毛)やウィッグのこと、仕事のこと、告知、がん保険、治療中の子育て、術後も温泉に行くには……などなど、生活に関するさまざまな疑問や問題について、明るく、ときにユーモラスに語っています。



後半部分では、約120名もの、さまざまなタイプやステージ、治療内容を選択した闘病仲間たちの、治療・生活に関する “本音"を、円グラフやコメントで紹介しています。


乳がんと診断されたばかりで「これからどうしたらよいかわからない」と困っている方にとって、本書が有効な参考書になってくれたら、抱えているその不安を少しでも解消してもらえたら……著者と仲間たちのそんな願いが込められている一冊です。



第1章 治療のこと

これから治療を受けられる方、ご家族の方へ 乳がんの治療って、こんな感じで結構バラエティに富んでます!

◎私の治療スケジュール/◎受診・告知・術前検査/◎手術・リハビリ・病理検査/◎抗がん剤治療

◎髪の毛のこと/◎放射線治療・ホルモン療法・術後検査/◎治療のこと(補足)



第2章 生活のこと

治療中って生活はどうなるの!? そんな不安にお答えします!

◎お金のこと/◎日々のこと



★100人の体験記 アンケート結果《データ&コラム》

・乳がん発見の経緯/定期検診は受けていましたか?/温存・全摘の選択/再建の予定は?

・初回受診から手術までの期間/乳房再建の方法は?/入院時に持っていってよかったもの/リハビリで腕はいつ上がるの?

・病理タイプ別治療体験記(ステージ・核グレード・サブタイプほか)/治療と妊娠/いろいろな抗がん剤/副作用対策

・ウィッグの費用について教えて! /いつ脱ヅラしましたか?

・ホルモン療法の副作用は?/ホットフラッシュはありましたか?/術後検査について

・抗がん剤治療中の「体重」/リンパ浮腫の予防/海外での治療

・みんなの治療費(表)/がん保険、あなたは?

・子供とのエピソード/障害のある子供と私の治療生活/仕事はどうしましたか?/乳がんになった一番の原因って何だと思う?

・職場で病気のことを公表しましたか?/術後、温泉には行っていますか?……ほか




とにかく読みやすい。

まずは読み易さに★5つ

文字も大きいし、出てくるエピソードでも笑えるし、要所要所のまとめから後半の100人体験記のアンケート結果につながるように工夫されていて、読み返すことが苦にならないつくりになっている。


乳がん関連本を大別すると、医療者による「病気・治療の解説」と体験者の「闘病記」になる。

この本はそのどちらでもなく、「乳がんと診断されて頭がの中が真っ白になってこれから〜・・・」の時に、何が知りたいか、どういう情報に出会えば気持ちが落ち着くかを終始一貫して患者目線で表現している本だ。

がん=死ぬかも、苦しいかも、のイメージにつながってしまいがちで、乳がんと言われたときに得体の知れない不安に陥るのもこのためだと思う。

相手が何ものか分からない、自分がどうなっていくか分からないから、「病気・治療の解説」本や「闘病記」を読むのだろうが、それではこの不安は拭えない。


どこの病院でどんな治療をすれば良いの?乳がん手術後の傷はどんなだろう?抗がん剤やホルモン剤の副作用は?髪の毛はどうなるの?仕事は続けられる?子育てはどうなる?お金はどれくらいかかる?


解説本や闘病記を読んでも不安に対する答えはなかなか出ないだろうし、自分の事がはっきり把握できない混乱した状態で細かく詳しい解説本を読んでも、かえって不安が増すことも。


悩んできたであろう多くの体験者のリアルな言葉を読むと、乳がんという未知のものに対したときに感じる不安が和らぎ、気持ちが落ち着くのではないかと感じられた。

ある医師の著書に「患者会は情報の宝庫」と書いてあった。

まさにその通りで、時間や居住地などの制約がありリアルな患者会には参加できない人でもこの本を読むことで自分に合う情報・知りたい情報が得られる場合もあるかも。

私は一人のがん患者として一番怖いのは、がんそのものよりも「がん患者」になって怖れと不安で前向きになれず気分が落ち込むことだと思っている。

そしてがん患者のほとんどは程度の差はあれそんな気分の落ち込みを感じることがあるだろう。

がん患者はとても孤独になることがある。これは辛い。

そんな時に読む本としても優れものだと思う。





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2014年06月30日

85歳以上の超高齢者の大腸癌に対する腹腔鏡下手術は安全に施行可能

■■■■【抗がん剤のニュース】2014/06/30■■■■


◆進行胃癌のセカンドライン治療としてramucirumab+パクリタキセルはQOLの評価でも良好な結果
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_--_221984_--_74784_--_1


◆85歳以上の超高齢者の大腸癌に対する腹腔鏡下手術は安全に施行可能
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_--_221984_--_74784_--_2


◆大腸癌のRAS遺伝子変異検査キットのRASKET KITは高感度で高特異性を示す
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_--_221984_--_74784_--_3


◆85歳以上の超高齢者の大腸癌に対する腹腔鏡下手術は安全に施行可能
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_--_221984_--_74784_--_8


◆進行胃癌のセカンドライン治療としてのramucirumab+パクリタキセルは欧米人患者のサブグループ解析でも有効性と安全性が一致
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_--_221984_--_74784_--_9


◆転移を有する食道癌にネダプラチン、5-FU、ドセタキセルを併用するUDONレジメンが有用な可能性
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_--_221984_--_74784_--_10


◆切除不能または再発胃癌にS-1とnab-パクリタキセルの併用が有用である可能性
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_--_221984_--_74784_--_11


◆nab-パクリタキセルとゲムシタビンの併用は進行膵癌のファーストライン治療として膵内の原発腫瘍の部位によらず有効
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_--_221984_--_74784_--_12


◆ゲムシタビン既治療の膵癌にナノリポソーム型イリノテカンMM-398と5FU/ロイコボリンの併用が有効
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_--_221984_--_74784_--_13


◆進行膵癌でCRP高値の患者のセカンドライン治療としてruxolitinibとカペシタビンの併用が有望
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_--_221984_--_74784_--_14


posted by ホーライ at 18:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 抗がん剤のニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

●化学療法 (悪性腫瘍)について(3)

●化学療法 (悪性腫瘍)について(3)


●細胞周期と抗がん剤

前述のように、抗腫瘍薬は異なる細胞周期に働きかけるもの、用量規定因子が異なるもの、作用する部位が異なりシナジーを得られるものを組み合わせて作られている。

実際の有効性はEBMによってなさられるべきだが、ある程度の理論的背景は存在する。

細胞周期はDNAを合成するS期、有糸分裂をするM期に分かれる

。細胞が分裂し、DNAの合成が始まるまでをgap1(G1),といいDNAの合成が終了し有糸分裂が始まるまでをgap2(G2)という

。これらはサイクリンとサイクリン依存性キナーゼによって調節されており、これらを監視する系に数多くの癌抑制遺伝子が存在する。

原則としてはアルキル化薬は細胞周期非依存性に働き、それ以外は何かしら周期に特異的に働く。

傾向としてステロイドはG1に働き、代謝拮抗薬やトポイソメラーゼ阻害薬はDNA合成のS期に働く、ビンカアルカロイド系など微小管機能阻害薬はM期に働く。

基本的に用量規定因子は骨髄抑制であることが多く、それゆえに骨髄機能を温存する為に間欠的スケジュールで投与する場合が多い。



●抗がん剤の種類

抗がん薬を分類すると、アルキル化剤 (alkylating agents)、代謝拮抗剤 (anti-metabolites)、植物アルカロイド (plant alkaloids)、そして抗腫瘍剤がある。


全ての薬剤はDNA合成あるいは何らかのDNAの働きに作用し、作用する細胞周期をもって分類する。

この項では抗がん剤の類縁物質は抗がん剤として使われない薬物でも記載する。

傾向としては抗菌薬の類縁物質は抗がん剤としても利用可能なことが多い。

新しい化学療法剤にはこの分類が適当でないものがあり、例えば、分子標的薬のメシル酸イマチニブ (imatinib mesylate) (Gleevec or Glivec) はチロシンキナーゼ阻害剤である種のがん(慢性骨髄性白血病や消化管間質腫瘍 Gastrointestinal stromal tumors)などの異常タンパク質に直接作用する。


●治療形態

今日においては化学療法剤を管理する方法は数多く存在する。

集学的治療 (combined modality chemotherapy) は薬剤のほかに(放射線療法や外科手術など)他のがん療法を併用する。

今日では多くの腫瘍がこの方法で治療されている。



多剤併用療法 (combination chemotherapy) はいくつもの薬剤を同時に患者に投与する同様な治療法である。

薬剤は異なる作用機序と副作用のものが選択される。

1つの薬剤の場合と異なり、がんが耐性化を獲得する機会が最小になるのがこの方法の最大の利点である。



(術後)補助化学療法 (adjuvant chemotherapy) は、外科手術などによりがんが取り除かれた後に一定期間行われるもので、がんが存在する証拠がほとんど無い場合に使用される。

この療法によって再発のリスクが減少する。

この療法は腫瘍が増殖する際に耐性を獲得する機会を減少させる手助けになる。

体の他の組織に転移した腫瘍細胞を殺すのにも有効であり、新たに増殖し盛んに分裂する腫瘍はとても感受性が高いので、しばしば効果的でもある。


また、手術の前に化学療法を行う治療法も乳癌等を中心に行われており、これは術前化学療法 (neoadjuvant chemotherapy) といわれている。


一般に抗がん剤の投与量は、その効果を最大限に引き出すため、患者が耐えうる最大の投与量(最大耐用量 : MTD)で設定されている事が多い。

そのため、化学療法の治療計画は、使用する抗がん剤の組み合わせはもちろん、治療を受ける患者の背景(全身状態、臨床症状、合併症、既往歴など)に応じて慎重に決定される。

また、治療中も患者の臨床症状や臨床検査値などを定期的に確認し、治療効果と副作用のバランスを鑑みながら治療計画を修正していく。

ラベル:化学療法
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2014年06月28日

がん化学療法

●がん化学療法

がんはDNAの突然変異による細胞の制御不能の増殖で、場合によっては、ある種の腫瘍を拡大させる傾向は遺伝する。

広義には、ほとんどの化学療法剤は細胞分裂を阻害することで、短時間で分裂する細胞を効果的に標的にする。


このような薬剤は細胞に障害を与えるので、細胞毒性 (cytotoxic) と書き表される。

ある種の薬剤はアポトーシス(事実上の「細胞の自殺」)を引き起こす。



イマチニブ (imatinib) がフィラデルフィア染色体 (Philadelphia chromosome) を標的にするような例を除くと、不幸なことに、科学者は悪性腫瘍の細胞を特異的に標的とする仕組みを見出すことができていない。

短時間に細胞分裂を繰り返す細胞に作用するという意味は、髪の毛の伸長や小腸の上皮細胞の置き換わりに対しても同様に作用するということである。


ある状況においては、いくつかの薬剤は他のものよりも、ましな副作用を持ち、少し患者の為になるならば医者は治療計画を建てることができる。

化学療法は細胞分裂に作用するので、急性骨髄性白血病 (acute myelogenous leukemia) やホジキン病を含むリンパ腫など増殖分画はがん細胞の大半が細胞分裂の途上にあり、化学療法剤に感受性が高い。



また化学療法剤は「幼若化」した(すなわち未分化の)腫瘍に作用する。

なぜならば、分化段階が進むと細胞は増殖が減少する傾向がある。

ある種の固形がんは細胞分裂が亢進しているので、化学療法の感受性が高くなっている。

一方、ある固形がんではがんの芯まで化学療法剤が到達しない事が問題となる場合もある。

その様な場合は、放射線近接照射療法やもちろん外科手術が解決法となる。



癌細胞は細胞周期が速く進む(分裂がはやい)といったところを標的にすることが多いがアポトーシス感受性の違いも重要なターゲットとなる。

細胞周期がターゲットなると、骨髄や消化管上皮、毛包といった細胞周期が早い正常細胞も攻撃される。

しかし、不思議なことに化学療法で抗癌剤で必発と言われる症状は骨髄抑制、悪心、脱毛であるが、最も患者を苦しめる悪心は消化管粘膜障害によるものではないことが多い。

posted by ホーライ at 03:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 抗がん剤について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする