2014年07月13日

固形がんに対する化学療法の効果判定

●化学療法 (悪性腫瘍)について(7)

●支持療法

腫瘍崩壊症候群

重症リンパ腫のような重篤な腫瘍の場合、患者によっては悪性腫瘍細胞が急速に崩壊し、腫瘍崩壊症候群を発症する。

腫瘍崩壊症候群は治療しないと致命的な危険な副作用である。

メイロンによる尿のアルカリ化大量輸液を行うことが多い。




●特徴的な支持療法

HD-MTXの支持療法

大量メソトレキセート療法は支持療法の進歩によって可能となった治療である。

BBBの存在によってリツキサンといった分子標的薬が届かない中枢性悪性リンパ腫の治療などで用いられる。

酸性尿下ではメソトレキセートの溶解性が低下し、尿細管内にMTXの結晶が沈着し排出障害を招く。

尿pHが7よりも小さい時は輸液500mlあたりメイロンを1A追加投与を行い尿のアルカリ化を図る。

また活性型葉酸誘導体であるロイコボリン(フォリン酸)を同時投与することで正常細胞の破壊を防ぐことができ、フォリン酸レスキュー療法と言われている。

葉酸代謝拮抗薬が含まれるST合剤はメソトレキセート投与中は行わないのが一般的である。

48時間後のMTX血中濃度1未満、72時間MTX血中濃度が0.1未満でなければロイコボリンを追加、投与延長を行う。



HD-AraCの支持療法

シタラビンの大量療法も特徴的な支持療法が必要である。

シタラビン症候群ともいわれるが投与後4〜6時間後に発熱、全身倦怠感、骨痛、筋肉痛、皮疹、結膜炎が出現することがある。

ステロイド点眼薬を予防的に用いることが多い。出

現時は全身ステロイドが有効とされている。



シクロホスファミドとイホスファミド

副作用に出血性膀胱炎がある場合である。

これらの抗がん剤は大量輸液を行い、さらに投与直前、4時間後、8時間後にウロテキサミン(メスナ)を投与する。

抗がん剤投与中は尿潜血をチェックし尿潜血が+2以上であれば輸液量を増やしたりする。




●固形がんに対する化学療法の効果判定

化学療法の効果判定は、腫瘍縮小率、もしくは延命期間を指標として行う。

化学療法の本来の目的は延命効果であり、比較試験では延命期間が重要視される。

一方、日常診療ではより簡便な腫瘍縮小率を用いる。

国際的にはWHOガイドラインもしくはRECISTガイドラインが用いられるが、日本では独自の効果判定基準が広く用いられている(各々の「癌取扱い規約」で定められている)。



●日本癌治療学会固形がん化学療法直接効果判定基準(1986)

著効(完全反応、完全寛解、CR(=Complete Response) ともいう)

画像上、全てのがんが消失した状態が4週間以上持続すること。

なお、「画像上、全てのがんが消失した」=「完治」とは限らない。

むしろ画像に写らないサイズのがんが残っている可能性が相当ある。



有効(部分反応、部分寛解、PR(=Partial Response) ともいう)


がんの大きさを2方向で評価できるならば、がんの面積の縮小率が50%以上になり、それが4週間以上持続すること。

がんの大きさを1方向でしか評価できないならば、がんの長さの縮小率が30%以上になり、それが4週間以上持続すること。



不変(NC(=No Change)ともいう)


がんの大きさを2方向で評価できるならば、がんの面積が50%未満の縮小〜25%以内の増大の範囲で、かつ、新病変が出現しない状態が4週間以上持続すること。

がんの大きさを1方向でしか評価できないならば、癌の長さがの30%未満の縮小〜25%以内の増大の範囲で、かつ、新病変が出現しない状態が4週間以上持続すること。


進行(PD(=Progressive Disease))

がんの面積や長さが25%以上増大、新病変の出現奏効率


(著効+有効)となる率。

化学療法が効いて完治した率ではない。

こうした効果判定の用語は、がんの縮小のみに着目しており、完治したとか、寿命が延びたとかいうことは着目していないことに注意すること。

日本癌治療学会では2003年以降、RECISTガイドラインの使用を推奨している。
posted by ホーライ at 20:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 抗がん剤について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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