●●●●● 微小管重合阻害薬 ●●●●●
●ビンカアルカロイド系
これらの抗がん性アルカロイドは植物より産生され、微小管の形成を抑止することで細胞分裂を妨害する。
これらは微小管の重合を阻害する。
ビンブラスチン(VLB、ビンブラスチン、エクザール)やビンクリスチン(VCR、オンコビン)、ビンデシン(VDS、フォルデシン)が含まれる。
ビンブラスチンの用量規定因子は骨髄抑制である。
ただし、悪心、嘔吐といった消化器症状もしばしば出る。
ビンクリスチンは悪性リンパ腫や小児白血病でよく用いられる薬だが、こちらの用量規定因子は末梢ニューロパチーである。
末梢神経の微小管の障害によって起こるとされている(軸索輸送など)。
骨髄抑制はビンブラスチンより軽度であるが、末梢ニューロパチーはよく起こる。
特に麻痺性イレウス、便秘は必発である。
●コルヒチン
痛風の予兆の際に用いる薬だが、その作用機序は不明である。
微小管重合を阻害することは分かっている。
●●●●● 微小管脱重合阻害薬 ●●●●●
●タキサン系
パクリタキセル(PTX、TAX、タキソール)やドセタキセル(DTX、TXT、タキソテール)が含まれる。
微小管が重合した状態でより安定にすることで、細胞の有糸分裂を停止させ、アポトーシスへ導く。
パクリタキセルの用量規定因子は末梢ニューロパチーであり、溶剤によるアレルギー反応が多く、デキサメサゾンや抗ヒスタミン薬で予防可能である。
ドセタキセルはパクリタキセルよりニューロパチーは起こしにくいが、強い骨髄抑制と体液貯留が起こる。
用量規定因子は骨髄抑制である。
●●●●● 抗腫瘍性抗生物質 ●●●●●
1953年に梅沢浜夫が発見したザルコマシシンが最初の抗がん性抗生物質 (antitumour antibiotic) であり、DNAポリメラーゼを阻害する。
いろいろ異なる種類があるが、主に2つの方法で細胞分裂を阻止する。
1.DNAに結合して分離できないようにする。
2.酵素を抑止してRNA合成を阻害する。
マイトマイシンC、アントラサイクリン系のドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、その他ブレオマイシンなどがある。
ブレオマイシンの用量規定因子は肺であり、肺線維症を引き起こす。
ブレオマイシンとマイトマイシンCがアルキル化剤として考えられている。
●●●●● 分子標的薬 ●●●●●
「がん細胞の、増殖、浸潤、転移に関わる分子を標的にして、その分子を阻害することにより、がんの治療を行う」とされる薬。
「正常細胞へのダメージを少なくしてがん細胞だけを攻撃すること」を目指す。
分子標的治療薬には小(低)分子化合物 (small molecule) とモノクローナル抗体がある。
分子標的薬の一般名の付け方として、モノクローナル抗体の語尾をマブ (mab) 、小分子薬の語尾をイブ(ib=阻害薬)と名付ける。
また、マブ (mab) の前にxiがつけば、異なった遺伝子型混在のキメラ抗体となる。
低分子化合物の抗癌剤には、キナーゼ阻害薬(イマチニブなど)やmTOR阻害薬(エベロリムスなど)、プロテアソーム阻害薬などがある。
●●●●● 内分泌療法 ●●●●●
いくつかの悪性腫瘍はホルモン療法に反応する。
ステロイド(よく使われるのはデキサメサゾン (dexamethasone) )は、(脳腫瘍において)腫瘍の増殖と腫瘍関連した脳浮腫を防止する。
前立腺癌はフィナステリド (w:finasteride) に感受性がある。
フィナステリドは、テストステロンを5α-ヒドロキシテストステロン(男性ホルモンの活性本体)へ代謝する5α-還元酵素を阻害する薬剤である。
ただし、耐性を生じることがある。
乳癌はしばしばエストロゲンやプロゲステロン受容体陽性であり、同ホルモンの生成阻害(アロマターゼ阻害剤 aromatase inhibitors)やホルモン作用の拮抗薬(タモキシフェンtamoxifen)が補助療法として利用される。
他にもホルモン感受性腫瘍が存在するが、作用機序は不明である。
以上